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2025年新卒採用 大学生就職活動調査
採用・就職活動の動向と、学生の志向・価値観の変化

企業と学生がお互いに「選び、選ばれる」時代の採用活動においては、学生がどのような志向や価値観を持っているのかを把握した上でコミュニケーションをとることが重要です。
この記事では、リクルートマネジメントソリューションズが実施した「2025年新卒採用 大学生の就職活動調査」の結果に基づき、採用・就職活動の動向と、学生の志向・価値観の変化について紹介します。
※一部、別調査のデータも含まれます。(別調査のデータには出典を記載)
1.採用活動・就職活動の動向
まずは、企業と学生、それぞれの活動の動向について見てみましょう。
- 採用活動の早期化
企業による学生の獲得競争は激化しており、採用活動の早期化が進んでいます。24卒と比較して、25卒では企業の面接の開始時期、内(々)定出しの開始時期ともに早まっており、卒業前年の2月までの内(々)定出し開始の割合は3割を超えています。
- 就職活動の早期化
企業の採用活動の早期化に伴い、学生の活動もますます早期化しています。政府の指針で採用選考活動開始とされている6月1日時点での25卒学生の内定率は4%、就職活動実施率は36.6%となっています。つまり、6月1日時点で既に8割以上の学生が内定を保有しており、6割以上が就職活動を終了している状況です。
- インターンシップ・仕事体験の重要性の高まり
25卒採用から、インターンシップをはじめとするキャリア形成支援に関わる取り組みが4つに類型化され、就業体験等の条件を満たすもののみを「インターンシップ」と称するとともに、一定の基準を満たすインターンシップで得た学生情報を、採用活動に使用できることとなりました。
学生のインターンシップ(仕事体験等のインターンシップと称さないイベントも含む。以下同じ。)への参加経験ありの割合は年々増加しており、25卒では0%となりました。
インターンシップへの参加理由としては、「仕事内容を知りたかった・体験したかったから(73.3%)」が1位となっています。また、「本選考の練習をしたかったから(34.6%)」「本選考への優遇措置があったから(26.3%)」の選択率が3割前後と、本選考を意識して参加している人もいることがわかります。
学生、企業双方にとって、インターンシップの重要性がますます高まっていると言えるでしょう。 - 売り手市場化の進展
25卒採用において、2024年10月1日時点で2社以上から内定を得ている学生の割合は0%、5社以上から内定を得ている割合は11.3%となっています。いずれも過去3年で最も高い割合となっており、売り手市場化が進んでいると言えます。
2.学生の志向・価値観の変化
続いて、調査結果から見られる、学生の志向や価値観の変化について紹介します。
- 仕事に求めること
学生が仕事に求めることの上位は、安定・貢献・金銭・成長の順となりました。安定を重視する傾向は例年どおりですが、24卒では4位だった金銭が、25卒では3位となっていることが特徴的な変化です。初任給引き上げの時流の影響とともに、不確実な社会への不安から、金銭的な安定を求める志向が強まっていることが考えられます。 - 応募(エントリー)のきっかけ
内定企業への応募のきっかけとして最も選ばれたのは「希望する勤務地で働けそうだから(5%)」で、20卒以降で最高値となりました。勤務地重視の傾向はコロナ禍を機に強まり、それに合わせて応募時に勤務地確約を掲げる企業が増加したことで、ますます重視されるようになったと考えられます。 - 志望度が最も高まった場面
学生の志望度が高まった場面としては、1位が「面接(1%)」、2位が「インターンシップ(20.0%)」となりました。インターンシップの重要性が高まっている一方で、会社説明会のインパクトは21卒以降比較的低い数値で推移しています。コロナ禍を機に、オンラインでの説明会が増加したことが要因の一つと考えられます。 - 志望度向上に影響が大きかったこと
学生の志望度向上に影響が大きかったもののトップは、例年と変わらず「自分がこの企業で働くイメージを持つことができた(0%)」でした。
20卒からの経年の傾向としては、「採用活動における各種のやりとり(合否連絡等)が手際よく迅速だった(18.0%)」の選択率が伸びています。一方で「自分のことをよく理解しようとしてくれた(22.0%)」は、選択率は上位にあるものの、下降傾向にあります。「理解しようとしてくれること」が重要ではないということではなく、採用・就職活動の早期化が進む中で、選考が早く進むことは学生に「自分を求めている」と感じさせる一方で、十分に理解されているという感覚を持ちにくくさせている可能性があります。 - 内定受諾の最終的な理由
内定受諾の理由としては、23卒、24卒に引き続き「自分のやりたい仕事(職種)ができる(8%)」が1位となりました。経年では、「入社後のキャリアを具体的にイメージできる」「労働時間や勤務スタイルに魅力がある」が上昇傾向にあり、自身が働くイメージを持てるかが重視されています。 - 就職活動の「軸」が明確になった時期
「就活の軸」、つまり就職先を決断するにあたって大事にしたいことがいつごろ明確になったか尋ねたところ、「自己分析を通じて明確になった(7%)」が最多となりました。一方で、就職活動のピークを過ぎた時期(卒業・修了年度の7月)になっても「軸は明確になっていない」とする学生が2割存在しており、こだわりを持たずに活動をしている人もいることがわかります。 - 内定受諾後に感じている不安
約8割の学生が、内定受諾後に不安を感じています。不安の理由としては、「なんとなく漠然と(1%)」「社会人としてやっていけるかわからないから(34.7%)」といった漠然としたものが多くなっています。学生の不安の解消に向けては、企業から働きかけを行いながら、学生が気になっていることを具体化することが重要と言えます。 - 入社意向に影響する要素
約6割の学生が、入社前に勤務地がわからないこと、配属部門・職種を選べないこと、入社後に転勤があることで、入社意向が低下すると回答しています。「大きく下がる」と回答した割合は24卒よりも増加しており、いわゆる「ガチャ」、つまり「不確実な要素」はできるだけ避けたいという心情や、自分で選べないことに対する不安が強まっていることが考えられます。
3.学生の志向や価値観を捉えるために
調査結果を基に、学生の志向や価値観の傾向について紹介してきました。
勤務地や金銭の重視度が高まっているとともに、「ガチャ」を避けたいという心情や不確実なことに対する不安が強まっており、安定志向の強さが一つの特徴であることがわかります。一方で、もちろんすべての学生がこの特徴に当てはまるわけではありませんし、また、一言で「勤務地重視」、「ガチャを避けたい」と言っても、その理由や背景にある不安は学生によって様々です。
ご紹介してきた全体的な傾向を参考にしていただきつつ、ぜひ、自社が採用したい学生や、自社が採用してきた人材がどのような志向・価値観を持っているのか、面接等の採用場面での学生との対話や、採用活動の振返りを行うことで、より詳細に捉えていっていただければと思います。なお、振返りの際には、内定者や内定辞退者等へのインタビューを行うことで、どのような志向の学生に対して、自社のどのような特徴やコミュニケーションが志望度向上/低下につながったのかを把握することが有効です。また、適性検査を活用することで、応募者や内定者の性格等の資質面での特徴を定量的に振り返ることができます。
ぜひ学生の特徴を捉えた上で、効果的な採用活動につなげていただければと思います。
適性検査(SPI)については以下の記事も併せてご覧ください。
>>SPIの分析で何がわかる?基本的な仕組みと活用方法を解説
執筆
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
HRアセスメントソリューション統括部 研究員
橋本 浩明
「2025年新卒採用 大学生就職活動調査」の実施・分析および
面接者・リクルーターを対象とする採用関連トレーニングの開発を担当。