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選考離脱・早期離職を防ぐ
採用コミュニケーションとは
~カギは採用CX(候補者体験)~
「選考途中で学生が離脱してしまう」「入社後の早期離職が気になる」。こうした悩みを抱える採用担当者は少なくありません。
学生は複数企業の選考を並行して進めているため、自社に対する選考参加意欲を高めることは非常に重要な課題です。また、採用活動のゴールは入社ではなく、入社後の定着・活躍です。そのためには学生が入社に対して納得感を持てるよう採用活動段階でのコミュニケーションを工夫する必要があります。
そこでポイントとなるのが、「採用CX(候補者体験)」です。本稿では、リクルートマネジメントソリューションズが実施した「採用CX(候補者体験)に関する意識調査(2025)」の結果を基に、これからの採用活動に求められるコミュニケーションを紹介します。本稿が採用活動を考える一助になれば幸いです。
1. 選考参加意欲に影響を与える採用CX(候補者体験)
・採用CX(Candidate Experience)=候補者体験とは
採用CXとは、採用選考プロセスを通じて候補者が抱く選考プロセスそのものや、企業に対する印象のことを指します。採用において企業が「選ばれる」立場となり、優秀な人材を獲得するためには、選考プロセスにおける採用CXが近年重要となっています。
日本では2022年頃から採用CX・候補者体験という言葉が使われるようになってきていますが、採用CXを評価するための明確なフレームがない状況でした。弊社の調査では欧米の研究や調査を参考に、独自に「妥当性」「公平性」「実力発揮感」「納得感」「誠実さ」「参加しやすさ」の6つの評価観点を設定し、調査をしました。
・選考参加意欲に最も影響するのは「誠実さ」
6つの観点が、企業への選考参加意欲(上がる・下さがる)に与える影響を確認した結果、特に「誠実さ」の観点が、上がる・下がる両面で1位になっており、選考参加意欲に最も影響するという意味で重要だとわかりました。選考参加意欲が上がる方向については、誠実さに次いで「納得感」「実力発揮感」の割合が高く、選考プロセスにおいてきちんと採否判断してもらいたいという学生の姿勢がうかがえます。
・学生からの評価が最も高い選考プロセスは個人面接
各選考プロセスにおける採用CX観点での評価を見てみましょう。選考参加意欲を左右する「誠実さ」が最も評価されているのは「個人面接」です。つまり、個人面接が採用CX向上における重要な要素を持っていることがうかがえます。![]()
学生に重視されている「誠実さ」に関連したエピソードを見てみると、面接官や採用担当者と直接やりとりしている場面が多いことが分かります。また、その内容は「学生の話に興味をもって面接を進めてくれた」のような、面接官の些細な反応に起因するケースも少なくありません。「誠実さ」というとどんなことをすれば良いのか?と思ってしまうかもしれませんが、少しだけ気をつけていただければ十分なのです。
・AI面接では人による面接よりも「誠実さ」などを感じにくい
近年増えてきているAI面接について、採用CXの観点から評価結果を見てみましょう。
人による面接と比較して、AI面接では「妥当感」「実力発揮感」「納得感」「誠実さ」を感じにくくなる人の割合が過半数となりました。。一方で、「公平性」と「参加しやすさ」についてはAI面接の方が感じやすくなる人の割合が他の観点と比較して相対的に高いようです。先述の通り、選考参加意欲を上げる採用CXの観点上位3つが「誠実さ」「納得感」「実力発揮感」であることを鑑みると、AI面接よりも人による面接の方が、選考参加意欲向上には効果的なようです。
2. 入社後の状態に影響を与える内定承諾時の「キャリア選択への納得感」
採用活動における学生との関わりは、学生の選考参加意欲だけでなく、入社後の状態にも影響する可能性があります。採用活動のゴールは、入社後の定着・活躍ですので、採用プロセスや、内定時の学生の状態が入社後の状態にどのように影響するかを理解しておくことも重要です。
・「キャリア選択への納得感」が勤続意向を高める
以下のグラフは、内定承諾時の「キャリア選択への納得感(内定先の企業に就職することに納得しているかどうか)」が、入社後の状態に及ぼす影響について調査したデータです。勤続意向について見てみると、「キャリア選択への納得感」が高い群の方が、納得感が低い群よりも得点が高くなっています。つまり、納得して入社した人の方が、勤続意向が高いということです。採用活動を通じて学生の「キャリア選択への納得感」を醸成することが入社後の定着・活躍という観点でも重要ということが分かります。
・「キャリア選択への納得感」に影響するもの
「キャリア選択への納得感」の醸成に採用活動におけるどのようなやり取りが影響しているかを確認すると、「オープンなやりとり」や「社員からのフィードバック」に関するすべての項目で、あてはまる程度の高い「高群」の方が「低群」よりも「キャリア選択への納得感」の得点が高くなっています。このことから、「面接などの接点で自分のことを掘り下げてよく理解しようとしてくれた」や、「社員が、自分のやりたいことや強みと仕事の接点について教えてくれた」といったことを学生に感じさせるような企業の対応が、学生のキャリア選択への納得感の醸成に貢献していると考えられます。
3. これからの採用活動に求められるコミュニケーション
採用CX向上と「キャリア選択への納得感」醸成のためには、企業側はどのようなことに気を付ければよいのか、採用コミュニケーションにおける2つのポイントを紹介します。いずれのポイントでも「誠実さ」を意識して対応することが重要となります。
① 学生の不安に寄り添う
1つ目のポイントは「学生が求めている情報を提示して不安に寄り添う」です。「2026年新卒採用 大学生就職活動調査 採用・就職活動の動向と、学生の志向・価値観の変化」の記事でもご紹介したとおり、昨今の学生は安定志向が強く、勤務地や働き方などの条件面への意識が強い傾向があります。こうした学生に対して、個々の学生が求めている情報をしっかりと提示し、不安に寄り添うことはますます重要となっています。学生は、「その会社で自分が働く姿を具体的にイメージできるか」を重視しているので、定量情報だけでなく、先輩社員の具体的なエピソードなどと併せて提供することが重要です。
一方で、学生が求める情報や耳あたりの良い情報ばかりを提供したり、過度に学生をお客様扱いしたりすることは、入社後のギャップを生む危険性もあります。企業と学生はお互いに「選び、選ばれる」関係なので、学生が求める情報を提供するだけでなく、「企業が」学生に求めるものも明確に伝える必要があります。その際には、「なぜそれを学生に求めているのか」といった意図や理由、背景にある企業が大切にしている考えなどと紐づけて説明することが重要です。学生のキャリアをフラットに支援する姿勢でこうした情報を伝えることが、入社後のギャップの低減や、学生の安心感・納得感・働くイメージの醸成につながります。
入社後のギャップの低減のためには、ネガティブな情報を開示することも重要です。
本選考中に志望度が上がった理由上位3つを見てみると、「自分のために十分な時間を割いてくれた」「自分のことをよく理解しようとしてくれた」といった、学生にしっかりと向き合おうとする企業の姿勢に加えて、「ネガティブな情報でも、求めれば隠すことなく開示してくれた」が挙げられています。すなわち、ネガティブな情報も隠さずフラットに開示することは学生の志望度向上につながると言えます。
ただし、ネガティブな情報については、本選考中に志望度が下がった理由の1位にもなっていることに注意が必要です。ネガティブな情報を伝えるときは、その背景や改善の方向性なども併せて示すことが重要です。単なる愚痴に聞こえてしまうような表現は避けなければいけませんし、よかれと思って学生が気にしていない部分までネガティブに伝えることは、志望度低下につながる可能性があります。学生個々人の志向や不安に合わせた情報提供をしていくことが大切なのです。
② コミュニケーションをパーソナライズする
2つ目のポイントは「学生の個に向き合いコミュニケーションをパーソナライズする」です。先ほどご紹介した「本選考中に志望度が下がった理由」の選択率の順位を学生の性格タイプ別に見ると、タイプによって志望度が下がった理由に違いがあることが分かります(弊社では、SPI3などのサービスにおいて、学生の性格タイプを「創造重視」「結果重視」「調和重視」「秩序重視」の4つに分類しています)。
たとえば、「ホームページなどがわかりづらく企業理解が進まなかった」は、結果重視タイプだと1位ですが、秩序重視タイプだと5位となっています。
結果重視タイプは、合理的で効率的なコミュニケーションを重視するタイプであるために説明がわかりづらいことに対してネガティブな印象を強く持ちやすいものと考えられます。一方で、秩序重視タイプはこつこつと取り組むタイプなので多少わかりづらい・見づらい情報でも根気強く読み取ることができ、結果重視ほどはネガティブな印象にならなかったことが推察されます。
また、「接点のあった社員の態度が悪かった」は調和重視タイプで3位となっており、このタイプのみ上位5位以内にランクインしています。調和重視タイプは、人との接点を重視するタイプなので、他のタイプよりも、社員の態度や協力的な雰囲気を重視する傾向があることが読み取れます。他にも特定のタイプだけ上位5位に入っている項目や順位の違いがあることから、学生のタイプや価値観に合わせたコミュニケーション設計が重要と考えられます。
学生ごとにパーソナライズされたコミュニケーションには、学生に対するフィードバックも有効です。面接などで、学生に合った個別具体的なフィードバックを行うことは、企業として学生に向き合う姿勢があることや、学生の考えをしっかり理解していることを伝えることになります。それと同時に、学生と自社との合致点を伝えることで、学生の「働くイメージ」やその会社で働くことの納得感を醸成することにもつながります。そのためには、個々の学生をしっかりと掘り下げて理解する必要があるとともに、強引に惹きつけようとするのではなく、学生の個を尊重し、学生のキャリアをフラットに支援するスタンスが重要となるのです。
・まとめ
採用CXの向上により学生の選考参加意欲を高めるとともに、採用活動を通じて「キャリア選択への納得感」を醸成するためのポイントとして、「学生が求めている情報を提示し、不安に寄り添う」「学生の個に向き合い、コミュニケーションをパーソナライズする」の2点をご紹介しました。いずれの対応でも、企業の「誠実さ」、つまり学生にしっかりと向き合う姿勢が土台になります。企業と学生がお互いに「選び、選ばれる」関係だからこそ、フラットに誠実に対応することが重要なのです。こうした採用コミュニケーションの実践が、選考離脱と早期離職を防ぎ、入社後の定着・活躍という採用活動のゴールにつながります。この記事でご紹介したことを是非ご活用いただければ幸いです。
【関連レポート・調査】
「採用CX(候補者体験)に関する意識調査(2025)」
https://www.recruit-ms.co.jp/news/pressrelease/8709951716/
新卒採用における採用CX(候補者体験)向上のヒントをひも解く(前編)
https://www.recruit-ms.co.jp/research/study_report/0000001384/
新卒採用における採用CX(候補者体験)向上のヒントをひも解く(後編)
https://www.recruit-ms.co.jp/research/study_report/0000001385/
「学生のキャリア選択と入社後の状態に関する意識調査」
https://www.recruit-ms.co.jp/issue/inquiry_report/0000001337/
執筆
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
HRアセスメントソリューション統括部 研究員
辻 真央
「2025年新卒採用 大学生就職活動調査」の実施・分析および
面接者・リクルーターを対象とする採用関連トレーニングの開発を担当。