お役立ちコラム

OJTの意味や取り入れる目的は?
メリットやデメリット、成功させるポイントを紹介

2025年01月29日
  • 人事アセスメントのナレッジ

企業が取り組む育成方法の1つに「OJT」があります。OJTは形こそ違えど古くから多くの企業で活用されており、現代でも効果的な育成方法とされています。

 

本記事ではそんなOJTについて、概要や目的、メリット・デメリット、実施の流れ、取り入れる際のポイントを解説します。「配属後はOJTという名の放置になってしまっている」「改めてOJTのポイントを知りたい」という方に、ぜひご一読いただけますと幸いです。

OJTとは

OJTとは「On-the-Job Training」の略称で「職場内訓練」を意味します。職場の上司や先輩が指導役となり、実際の業務を通じて若手や後輩に知識・スキルを教えていく育成方法です。

 

第一次世界大戦時のアメリカで始まった「4段階職業指導法」が起源であり、戦後の高度経済成長期以降、日本でも行われるようになったと言われています。

 

OJTは時代に沿って形を変えつつも、現代でも効果的な育成方法として多くの企業で活用されています。

 

OFF-JTとの違い

混同されやすいOFF-JTは「Off The Job Training」の略称で「集合研修」を意味します。

 

OJTが実際の職場で、業務を通して実践的な指導を行う育成方法であるのに対して、OFF-JTは職場を離れ、特別に場所や時間を設けて知識・スキルの習得を目指す育成方法です。

 

コーチングとの違い

コーチングは、対話を通じて立場や役割にふさわしい態度や能力の獲得を支援するプロセスで、ビジネス以外でも幅広く使われています。

 

一方的に知識やスキルを教え込むのではなく、ポテンシャルを発揮できるように促すことで、「ビジョンの明確化」「信念・価値観の明確化」「チャレンジ行動の促進」などを実現します。

メンタリングとの違い

メンタリングは、経験の浅い社員の課題や悩みを相談する相手として先輩社員を配置し、1対1の対話を通じて、社員が抱えている課題の解決や悩みの解消を目指し、成長をサポートする制度です。相談相手として配置する社員を「メンター」、サポートを受ける社員を「メンティー」と呼び、メンターにはメンティーと歳の近い先輩や、業務上の接点が少ない他部署の人が選ばれる傾向にあります。

OJTの目的や必要性

一般的にOJTは、以下の目的により実施されます。

 

組織全体の業務効率の向上

OJTは人材の早期育成を可能にします。実際の業務を通じて具体的な知識・スキルを効率良く指導することができるので、短期間で組織全体の業務効率の向上を目指せます。

 

従業員エンゲージメントの向上

OJTを実践することで、職場の上司・先輩と若手・後輩が自然と交流を深めることができます。

こうした交流により新入社員の持つ人間関係への不安が解消され従業員エンゲージメントが向上し、定着率がUPするなどの効果につながります。

 

OJTで得られるメリット

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続いて、OJTを実施する具体的なメリットを解説します。

育成コストの削減につながる

OJTは短期間かつ職場内で効率的に指導を行える育成方法です。外部の研修会社を利用したり、講師を招聘したりする方法と比較して時間や人的コストを抑えることができ、育成コストの削減につながります。

 

即戦力となる人材の育成ができる

OJTでは、実務に携わりながら業務上必要な知識・スキルを学びます。実践的な知識・スキルが身につくので、新入社員を即戦力人材として育成することができます。

 

社内コミュニケーションの活性化につながる

OJTは、指導する上司・先輩と指導される若手・後輩でコミュニケーションを取りながら進めていく必要があります。自然と交流するシーンが増えることで社内コミュニケーションの活性化につながります。

 

個々に合わせた育成が可能になる

育成担当者と育成対象者がコミュニケーションを取りながら進めるOJTには、新入社員の今ある知識や持っているスキル、性格、強みなどを考慮し、一人ひとりに合わせた育成方法を考えて指導内容を組むことができるというメリットもあります。

 

得意を伸ばす、苦手をなくすなど、個々に合わせて無駄なく指導できるのも魅力の1つです。

 

育成担当者の成長にもつながる

OJTで成長できるのは新入社員だけではありません。若手・後輩の育成を通して業務理解が深まることから、育成担当者の成長にもつながるというメリットがあります。

 

OJTのデメリット

OJTにはメリットだけではなくデメリットもあります。デメリットについても理解しておきましょう。

 

得られる知識が限定的になる可能性がある

OJTによって得られる知識やスキルは、現場で活かせるものに限定されてしまうことが多いのが難点です。

 

そのため、体系的に業務を理解することが難しい、 業務の全体像を把握しづらい、会社・組織の全体や仕組みを理解しづらいなどのデメリットがあります。

 

育成の質や成果にばらつきが生じる

OJTは職場の上司や先輩が現場で指導する形になるため、育成担当者のスキルや経験、育成の得意不得意などによって、育成の質や成果に差が出てしまう可能性があります。

 

こうしたばらつきを防ぐためには、会社や人事のバックアップが必須と言えるでしょう。

 

育成担当者側の業務負担が増える

OJTの育成担当者は、通常の業務をこなす傍らで新入社員の育成も行うことになるため、そのぶん業務負担が増えることになります。

 

そのため、育成担当者の業務量を調整する、メンタルケアをするなど、フォローする体制を整える必要があります。

 

OJTを実施する流れ

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一般的にOJTは、以下の流れで実施されます。

 

育成対象者の知識や経験・スキルを把握する

OJTは個々の知識レベルやスキル、経験などによって育成内容が変わってきます。このため、最初に育成対象者の知識や経験・スキルを洗い出して把握することから始めます。

 

OJTの目標を設定する

続いてOJTを実施するにあたっての目標を設定します。目標設定の際には、会社が求める理想の人材像を明確に定義することが大切です。ここで設定した目標は、後の育成計画の作成に活かします。

 

育成担当者を決定する

育成対象者の現状把握や目標設定ができたら、それに合わせた育成担当者を検討・決定します。

 

この時に重要となるのが、「育成担当者と育成対象者の相性」です。OJTは育成担当者と育成対象者がコミュニケーションを取りながら進めることになります。そのため、双方が不要なストレスを抱えることのないよう、良好な関係性を築ける育成担当者を選ばなければなりません。

 

例えば、適性検査を活用して、それぞれの性格特徴や接し方を分析し正しく理解することで、一人ひとりに合わせた最適なコミュニケーションをとることが可能になります。

 

育成計画を作成する

育成対象者の現状把握やOJTの目標設定、育成担当者の決定が終わったら、育成計画を立てて任せる業務量、質を検討します。

 

また教育計画を立てる際、適性検査を活用すると育成対象者のつまずきやすいポイントをはじめとした性格特徴や接し方を知ることができるため、OJTの効果を高められるでしょう。

 

業務のやり方を見せる

育成する段階に至ったら、まずは育成担当者が手本として業務を行い、実際の仕事のやり方や流れを見せることで、育成対象者に業務内容をイメージさせます。

 

業務内容を説明する

育成担当者が行った業務に関して、今度は業務内容を説明します。この時、業務の意味や目的、必要性などもあわせて教え、育成対象者からの質問があれば納得してもらえるまで回答するようにしましょう。

 

この時、口頭での説明だけだと覚えきれない可能性があるため、育成担当者は、あらかじめ流れや業務内容の説明テキストを作っておく、育成対象者にメモをしてもらうなどの対策をしておくと良いでしょう。

 

業務に取り組んでもらう

説明が終わり、育成対象者の疑問も解消されたら、次は育成対象者に実際に業務を行ってもらいます。

 

最初のうちはスケジュールに余裕を持たせて、一つ一つ確実に進められるようにしましょう。また、初めから完璧を目指す必要はないことを伝えつつ、わからないことはすぐに聞けるような環境作りが大切です。

 

振り返りを行う

最後に、行った業務に対する振り返りを行います。反省点や改善すべき点などを洗い出し、業務に関するノウハウなどを教えて次の業務に生かします。

 

この時、反省点をただ挙げていくだけでなく、なぜダメだったのかどう改善すればいいのかまでしっかりと落とし込めるようにしましょう。また、反省点以外にも良かった点はどこか、さらに伸ばせると良い点なども挙げられると良いでしょう。

OJTを取り入れる際のポイントや注意点

OJTを取り入れる際には以下のポイントや注意点を知っておくことが大事です。

 

社内全体で情報共有を行う

OJTを成功させるためには会社全体でサポートする必要があります。適切なサポートを行うためには、社内全体での情報共有が欠かせません。

 

育成担当者と育成対象者だけで取り組むのではなく、会社全体で育成を行う気持ちでOJTを実施することが大切です。

 

指示したまま放置はしない

OJTでは、育成対象者が指示だけを出されて放置されてしまうことがたびたび起こります。

 

繰り返しになりますがOJTではコミュニケーションを取ることが重要です。育成担当者は都度業務の進捗確認を行い、業務の進め方や方向性に間違いはないかなどを確認しましょう。また育成対象者には、報連相を徹底することを事前に説明しておきましょう。

 

同じ業務を繰り返し行う

OJTは、同じ業務を継続的に実施することで効果が得られます。一度行った業務はそれで終わりではなく、繰り返し行い反復的に学ぶことが重要です。

 

1on1ミーティングでOJTの効果を高める

定期的に1on1ミーティングを行うことも大切です。育成担当者と育成対象者が対話型のミーティングを行うことで、信頼関係の構築や育成対象者の主体性を高められたり、状態を分析しやすくなるなどのメリットを得られます。ひいてはOJTの効果を高めることにつながるため、積極的に取り入れていきましょう。

 

OFF-JTと組み合わせて進めてみる

OFF-JTは、効率面ではOJTに劣る育成方法ですが、体系的な知識を習得できる、育成対象者の成長に差が生まれにくいなどのメリットもあります。

 

2つの育成方法を組み合わせて進めることでOJTのデメリットを補うことができるので取り入れる際には検討してみてください。

 

適性検査SPIで質の高いOJTを実現しよう

OJTの実施にも、株式会社リクルートマネジメントソリューションズの適性検査SPI3をご活用いただくことをおすすめします。

 

適性検査SPI3は一般社会人として広く必要とされる能力、性格といった資質を測定できる検査です。例えば、育成対象者の仕事場面で求められる課題に対して合理的に思考する能力、目的を定めそれに沿って行動する能力、効果的・能率的に事態を処理していく能力や、性格特徴を把握する際、育成計画を作成する際に便利です。

 

検査で得られる情報は、円滑なコミュニケーションの実現にも役立てることができます。育成対象者と相性の良い育成担当者をスムーズに決定できる他、育成支援報告書を使えば育成担当者が、育成対象者のスムーズな適応を図る上での重要なヒントを得ることが可能です。

人材育成やマネジメント支援など、多様な人事施策に活用できる適性検査SPI3。OJTを実施する際は、あわせてのご利用をぜひご検討ください。

 

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まとめ

本記事ではOJTについて、概要や目的、メリット・デメリット、実施の流れ、取り入れる際のポイントを解説しました。

 

職場内の育成担当者を用意し、実際の業務を通して知識・スキルを指導するOJTは、短期間で効率的に組織全体の業務効率向上を目指せます。また、職場内のコミュニケーションが増えることによる従業員エンゲージメントの向上も見込めます。

 

一方で得られる知識・スキルが偏ってしまう可能性がある、育成の質に差が生じる、育成担当者の負担が大きいなどのデメリットもあります。OFF-JTと組み合わせて実施したり、適性検査SPI3を活用したりすることでデメリットを補い、効果を高めましょう。