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タレントマネジメントとは?
導入する目的やメリット、活用方法について解説

2025年01月29日
  • 人事アセスメントのナレッジ

多くの企業が注目しているタレントマネジメント。1990年代後半に米国で生まれた用語ですが、ビジネス環境変化のスピード感を踏まえ、日本でも導入・運用を進めていく企業が増えてきています。

 

本記事ではそんなタレントマネジメントについて、概要や必要とされるようになった理由、導入するメリットや流れ、ポイントなどを解説します。

タレントマネジメントとは

タレントマネジメント(TM)とは、従業員の持ち味や特性などを重要な経営資本として捉え適切に把握し、組織横断的に最適な人材配置・開発を実現するための人材マネジメント手法です。

 

タレントマネジメントは事業推進・人事戦略・現場マネジメントを後押しする取り組みとして注目を集めており、実際に導入・運用を強化する企業も増えつつあります。

 

一言でタレントマネジメントといっても、事業戦略・人事戦略次第で取り組み内容は変わってくるため、実践する内容は企業ごとに異なります。

 

タレントマネジメントが必要とされるようになった理由

前述の通り概念としては1990年代から存在しているタレントマネジメントですが、近年になって導入・運用を強化する企業が増えてきています。現代において、なぜタレントマネジメントが必要とされるようになったのでしょうか。その理由には以下のようなものがあります。

 

働き方や人材の多様化

近年、働き方改革が推奨されていることで働き方・個人の価値観の多様化が進んでいます。また、グローバル化に伴い多様な従業員を活かすことの重要性も増しています。

 

過去のように、「一社に入社したら一生働く」ことを前提とした一律のマネジメントでは個人の能力・やる気を引き出して活かすことは難しい状況です。そこで、従業員一人ひとりの価値観・持ち味を把握・理解したうえでそれらを活かすべく、タレントマネジメントへの取り組み強度を上げる企業が増えているのです。

 

 

労働人口の減少に伴う人手不足

日本は少子高齢化によって労働人口が減少し、慢性的な人手不足に陥っています。そんななかで安定的な企業経営を行うためには、従業員一人ひとりに最大限のパフォーマンスを発揮してもらう必要があります。この先の労働人口の枯渇も見据え、今からタレントマネジメントを強化しようという企業が増えています。

 

人的資本経営への変化

人材に関して、従来は資源の一つとしてみられていましたが、近年では企業の資本として位置付けて投資し、企業価値向上につなげる「人的資本経営」にシフトしてきています。

 

人的資本経営とは、人材を「資本」として捉えて投資し、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値の向上へとつなげていく経営手法です。

 

事業戦略を踏まえ、人的資本の現状・理想を置き、適切な投資・施策を進めて個々の力をより引き出していくには、人的資本の現状の可視化が必要となります。こうした人材に対する考え方の変化から、タレントマネジメント強化が求められているのです。

 

 

グローバル化が進む中での競争率の激化

グローバル化が進む現代、国家間の競争率が厳しくなってきていることからグローバル人材の採用・育成がより重要になっています。

 

グローバルで活躍している従業員を把握して採用に活かす、在籍している従業員のスキル・経験を踏まえてグローバルで活躍できる素養のある人材を確認するなど、グローバル人材の採用・育成においてもタレントマネジメントは重要なテーマとなります。

 

 

タレントマネジメントを導入するメリット

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さまざまな理由や背景により導入・運用を強化されているタレントマネジメント。

では、タレントマネジメントを導入することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか?以下で解説していきます。

 

適材適所が実現できる

タレントマネジメントを実践することで、従業員の持ち味や特性などをデータベース化することが可能です。

 

従業員の情報が可視化されることで、各人材の能力を最大限に発揮できるポジションへ適正に配置できることがタレントマネジメントの最大のメリットとして挙げられます。

 

一人ひとりに合わせた人材育成ができるようになる

上と同様の理由で、施策として人材の可視化を進めることにより、個々の強みや課題をはじめとした弱みなどを把握することができます。そして、ひとり一人の強みや課題など、持ち味を踏まえた成長イメージやキャリア形成、そこに向けたアサインメントや必要なOJT・OffJTなどを考えていくことができるようになります。

 

素早いビジネス展開が可能になる

タレントマネジメントを導入し、適切な人材配置を行えるようになることで、新たなビジネスを展開する際に必要な人材が把握しやすくなり、そこにフィットする可能性が高い人材を見つけやすいため人員配置をスムーズに行えるようになります。これにより素早いビジネス展開が可能です。

 

企業イメージの向上につながる

タレントマネジメントの導入によって適正な人材配置が行われることで、一人ひとりの能力やスキル・志向に合わせた仕事を任せることができます。

 

また、取り組み施策によっては本人のキャリアイメージや持ち味について上司・本人間で会話を行う機会を増やすこともあるかと思います。それらの取り組みを通じて、自身の能力を発揮できると感じる場所で働くことで、従業員のモチベーションアップや人材育成の強化にもつながります。

 

結果、正当な評価をしてくれる会社として企業イメージの向上につながり、優秀な人材を確保しやすくなるというメリットも見込めます。

 

従業員エンゲージメントの向上につながる

個々の能力やスキル・志向に合わせた育成・配置を行うことは、仕事にやりがいを感じながら前のめりに取り組める従業員を増やすことにつながります。その結果として従業員のエンゲージメントが向上し、離職率の低下や生産性の向上など、さまざまなメリットが見込めます。

 

顧客満足度の向上にもつながる

これまで挙げたように、個々の能力やスキル・志向に合わせて適正な人材配置を行うことにより、各職務・組織に向いている人材のアサインが可能となります。

結果として業務の質が向上し、最終的にはプロダクトやサービスの品質、顧客満足度の向上につながります。

 

 

タレントマネジメントを導入する流れ

続いて、タレントマネジメントを導入する際の流れを解説します。これから導入することを検討している場合はぜひ参考にしてください。

 

理想と現状を照らして導入目的・目標を設定

最初に、事業戦略に照らした理想状態を置きます。そのうえで、人事戦略上優先順位の高いテーマを洗い出します。

 

次に、自社の人・組織の現状を把握し、理想状態と照らして課題を洗い出します。

 

例えば事業戦略に照らした際に、新規事業を伸ばすために必要な人材の採用と定着が人事戦略上の優先テーマだとした場合、従業員の中の新規事業に適した人材を可視化できていない、という課題がタレントマネジメントに取り組む目的となります。

 

タレントマネジメントをなぜ導入するのか、経営にどのように活かすのかを明確にしておきましょう。

 

 

人材採用・育成・配置を計画

続いて、タレントマネジメントを導入する目的に照らして、人材採用・育成・配置をどのように進めていくかの計画を立てます。

 

そもそも人が足りないのか、人材の数はそろっているが育成強化が必要なのか、社内の人の配置に手を入れるべきなのか、優先度の高いテーマを特定したうえで必要な人材情報や、既存施策の改善の必要性を整理していきます。

 

人材情報の収集と可視化

計画を立て終わったら、タレントマネジメントの実施に欠かせない人材情報を収集し、データ化・可視化を行います。人材情報には以下のような情報が該当します。

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計画内容によっては、今社内にストックできていない情報が必要な場合もあるでしょう。その場合には、新規の取得や情報入力促進などから始めるケースもあります。

 

また、タレントマネジメントのためのシステムが整っていない場合には、入力・管理の仕組み導入を進めるケースもあります。

 

人材の採用・育成・配置施策の実行

計画書を基に、人材の採用・育成・配置を行っていきます。

 

収集した能力・スキル・志向などのデータをチェックし、現状と照らし合わせた結果、社外から人を調達することを進める場合には採用強化、現従業員の強化が必要な場合には人材育成、最適配置により実現できる場合には配置強化を進めていきます。

 

ただし、経営や人事の目線から見た際には適材適所が叶う配置であっても、一方的な決定では従業員のエンゲージメント低下につながる可能性があります。個人のキャリアパスや志向も踏まえつつ人材を配置しましょう。

 

施策実行後の分析と見直し

最後に、施策実行後のモニタリング・見直しを行います。

 

導入目的が実現できているのか、取り組み施策はどうだったのかを確認したうえで、施策の改善が必要な場合には取り組み内容を変更していきます。

 

例えば人材配置施策に取り組み、もし再配置が必要だという判断に至った場合には引継ぎや配置換えを行います。

 

 

タレントマネジメントを導入する際のポイントや注意点

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最大限の効果を得るために、タレントマネジメントを導入する際は以下の点を意識しましょう。

 

導入目的に照らして、施策に一貫性を持たせる

前に述べた通り、タレントマネジメントとは事業戦略を実現する上で重要な人事課題を解決するための取り組みです。

 

導入目的に照らして、採用・育成・配置の取り組みが一貫していない場合、あるいはそこに納得感がない場合は成功確率が下がったり、従業員の賛同を得られなかったり、結果的に施策が形骸化することにつながります。

 

採用強化や人材配置の強化など特定テーマにおける取り組みを進める際にも、事業・人事上の背景や取り組む意味について明確にし、社内でメッセージしながら進めていくことが重要となります。

 

環境や体制を整える

タレントマネジメントを導入する目的や取り組みテーマに照らして、最適な環境・体制を整えてから施策に着手しましょう。

 

例えば、影響範囲や従業員からの見られ方を考えた際に、キーとなる組織のトップが検討チームに入っていた方が良い場合にはアサインできるように働きかけておきます。

 

また、情報を残す仕組みの強化が必要であればシステム導入を進めるなど、目的達成のためにどのような環境・体制が必要かを考え、準備を進めましょう。

 

人材指標・項目を考える

タレントマネジメントを導入する際には人材評価の指標を決めますが、評価の指標や項目の数が多すぎると業務負担が増えたり、適切な評価ができなくなってしまったりする可能性があります。

 

タレントマネジメントを導入する際にはもちろん、導入した後も必要な項目・不要な項目を定期的に見直すことが大切です。

 

管理職とのコミュニケーションを強化する

取り組みを進める上では、従業員の上司である管理職に施策の意図を理解し、運用してもらうことが重要となります。

 

何のための施策で、従業員にはどうメッセージしたいのか、その中で管理職の果たす役割は何かなど、経営・人事としての意思を明確にしたうえで、研修・ガイダンスなどの場で共有していきましょう。

従業員とのコミュニケーションを強化する

タレントマネジメントにおいては、データを活用するだけでなく、実際に従業員とコミュニケーションをとり対話をすることも大切です。

 

特に人材配置施策を進める際には、従業員目線で言えば「異動」となります。異動自体はポジティブなものであっても一定のストレスを伴います。本人が向いているけれど現時点でやりたい気持ちがないようなケースの場合、エンゲージメントも低下しやすいため、コミュニケーション強化とセットで進めていくことが重要です。

 

定期的な見直し・アップデートが必要になる

タレントマネジメントでは定期的に見直し、アップデートが必要です。

例えば人材情報に関して、一度集めて整理したら終わりではなく、常に最新の情報になるよう定期的にアップデートを行います。アップデートのタイミングは異動の際や資格取得をした際などを目安にしましょう。

 

 

タレントマネジメントにも活用できる適性検査SPI

タレントマネジメントにおける重要な取り組みテーマとして、従業員の資質の可視化があります。

 

従業員の資質の可視化には適性検査SPIを活用することがおすすめです。最近は採用選考向けとは別に従業員向けの適性検査が出てきていて、SPIではSPI3 for Employeesという従業員向けサービスがあります。

 

株式会社リクルートマネジメントソリューションズが提供する適性検査SPI3 for Employeesは、従業員の資質・志向を可視化することにより、人材採用や育成、人材配置などタレントマネジメント施策に活用が可能です。

 

従業員向け適性検査 SPI3 for Employeesは、一人ひとりの強みや価値観を可視化し人事施策を進化させます。働き方をめぐる考え方が多様化する中、人事や現場上司には個々に合った対応が求められます。SPI3 for Employeesは従業員の「性格・志向・仕事観」を測定できるので、従業員の個性に合わせたコミュニケーションに役立ちます。

 

パンフレットや報告書の見本など、ご検討に必要な資料一式をお送りいたします。

ぜひお気軽に無料の資料請求をお申込みください。

 

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まとめ

本記事ではタレントマネジメントについて、概要や必要とされるようになった理由や導入のメリット、流れ、ポイントなどを解説しました。

       

タレントマネジメントは人材採用・育成・配置や素早いビジネス展開に役立てることができ、業務効率や従業員エンゲージメント、顧客満足度の向上など、さまざまなメリットがあります。従業員の成長は組織としての強化にもつながります。

 

この記事でご紹介したポイントを踏まえて、タレントマネジメントの導入・運用強化を検討してみてはいかがでしょうか?