適性検査SPI3お役立ちコラム

27卒採用トレンド
「10年の変化」と、これからの新卒採用のあり方

2026年10月30日
  • 人事調査・研究

はじめに

新卒採用をめぐる環境が、大きな転換点を迎えています。政府が定める就職・採用活動の日程ルールと実態の乖離は年々拡大し、早期化・長期化が加速する一方、生成AIの普及が選考プロセスそのものを揺さぶり始めました。構造的な人手不足を背景に採用競争が激しさを増す中、企業の人事担当者にはどのような対応が求められるのでしょうか。 インディードリクルートパートナーズ リサーチセンターの栗田貴祥氏に、『就職白書2026』のデータをもとに、新卒採用市場の現状と今後の展望を伺いました。

新卒採用市場の現在地――構造的な人手不足と、見えにくい「格差」

 ――まず、新卒採用市場の全体像を教えてください。27卒に向けて、企業の採用意欲はどのような状況にありますか。

企業の採用意欲は引き続き高い水準にあります。『就職白書2026』の調査では2027年卒の採用予定数の平均は29.3人で、2026年卒実績の28.8人から微増しています。大卒求人倍率も回復基調が続いており、マクロ的に見れば学生に有利な状況です。しかし、その内実は一様ではありません。26卒において、まったく異なる景色が広がっています。大卒求人倍率は全体では1.6倍を超えていますが、細かく割ってみると非常にばらつきがあります。マクロ的に見ると学生に有利だけれども、ミクロ的に見ればやはり狭き門というところもあります。

実際、採用予定数を充足できた企業の割合は2026年卒で44.2%にとどまっています。2024年卒の36.1%から回復傾向にはあるものの、半数以上の企業が計画未達のまま採用活動を終えています。未充足の背景も企業規模によって異なり、中小企業では「選考応募者が予定より少なかった」が77.4%と高く、そもそも学生に認知されていないという根本的な課題があります。一方、大企業では「内定辞退が予定より多かった」が66.7%に達し、応募者は集まるものの最終的に入社に至る学生の確保に苦労している構造が浮かび上がります。

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※出典:インディードリクルートパートナーズ リサーチセンター
『就職白書2026』採用計画(2027年卒)より
https://shushokumirai.recruit.co.jp/white_paper_article/20260220001/

――中途採用へのシフトや厳選採用の動きについてはいかがでしょうか。

中途採用の比率を増やす動きは、主に新卒採用を主体に人材調達を行ってきた大手企業を中心に顕著です。
新卒を一括採用して社内で育成し、定年まで貢献してもらうといったモデルが、成熟経済の時代に入り機能しにくくなってきました。こうした環境の変化に対応するために、中途の即戦力人材にも加わってもらって、アジャストしていく必要性が高まってきています。 ただし、新卒採用の重要性が低下しているわけではありません。18歳人口が減少する中でも進学率の高まりにより増えてきていた大卒者数は、2026年頃をピークに今後減少に転じる見込みであり、若手人材の確保や自社カルチャーの継承という観点から、新卒採用への期待は依然として大きいといえます。新卒採用の意欲自体が下がっているのではなく、中途採用も含めた人材ポートフォリオ全体の最適化が進んでいるというのが実態です。

採用の早期化と長期化――もはや「一律のルール」では統制できない現実

 ――『就職白書2026』では、10年間の変化として早期化の加速が大きく取り上げられています。

10年間の変化の中で最も顕著なのは、採用スケジュールの前倒しです。2017年卒から「広報活動3月、採用選考活動6月、正式内定10月」という現行の日程ルールが始まりましたが、2月1日時点の学生の内定率は2017年卒の2.3%から2026年卒では39.3%へと急上昇しました。卒業年次前年2月までに内定出しを開始する企業の割合も、2017年卒の1.2%から2026年卒には41.4%に達しています。

2027年卒ではさらなる早期化が見込まれます。面接の開始時期について「卒業年次前年2月までの累計」は64.3%(2026年卒との差+13.1ポイント)、内々定・内定出しの開始時期も53.3%(同+10.0ポイント)と、一層の前倒しが予測されています。

一方で学生の就職活動も多様化しています。大学3年生の6月までに活動を開始した学生は2017年卒の6.4%から2026年卒には51.5%に拡大しました。実質就職活動期間の平均は約9.1カ月ですが、その分布は1~3カ月で終える層から13カ月以上続ける層まで幅広く分散しています。

学生の動き方が多様化していることから、これまでのような一律の打ち手は響かなくなってきているのかもしれません。この早期化は学生にとっても負担となっています。2026年卒学生のうち、56.7%が参加しており、参加者の60.1%、非参加者の55.3%が「混乱や負担を感じた」と回答しています。早期選考の実施時期を、応募前に把握できた学生は全体の49.0%にとどまり、参加者と非参加者の間で情報アクセスに約30ポイントの差が生じています。政府が定めるスケジュールを「参考にしていなかった」学生は全体の68.2%に上りました。

※早期選考:本稿における「早期選考」とは、3月1日より前に実施される選考活動を指す。

インターンシップの変容――採用直結化と「諸刃の剣」としての本質

――インターンシップについてどのような変化があるのでしょうか。

 インターンシップ等(※)の企業実施率は2013年度の46.0%から2026年卒には75.3%へと上昇し、学生の参加率も6~7割で推移しています。しかし注目すべきは、その内容の変化です。半日または1日のプログラムへの参加割合は2026年卒で82.4%に達し、短期化が顕著に進んでいます。企業の実施目的も変化しており、「社会貢献」の割合が2012年度の79.3%から26.1%に減少した一方、「採用直結」は6.3%から36.3%に増加しました。

※本稿では、インターンシップを含むキャリア形成支援プログラムを『インターンシップ等』と表記します。

「採用を目的として実施している」と回答した企業は2017年卒の23.2%から2026年卒の62.8%へと大きく増え、採用者に占めるインターンシップ等参加者の割合も36.3%に達しています。2027年卒の採用方法・形態として「採用直結と明示したインターンシップ等からの採用」は23.2%で、2026年卒実績から4.7ポイント増加しています。

 面接だけでは、学生と企業の双方が理解できる情報には限界があります。仕事体験の機会を通じて、学生が実際の仕事や職場を知り、企業も学生の強みや考え方を理解することで、双方が入社後の働き方をより具体的に考えられるようになります。構造化面接など評価の公平性を高める取り組みに加え、仕事体験で得られる多面的な情報を組み合わせることで、学生と企業双方の納得感を高めることができます。

 ただインターンシップは伝家の宝刀ではなく諸刃の剣。学生はインターンシップを通じて一緒に働く先輩をちゃんと見ています。重要なのは、巧みなアピールの文言を考えることではなく、今働いている人たちのワークエンゲージメントや組織エンゲージメントをいかに高めるかということです。

 

――インターンシップ等に学生を集める工夫も必要になってきていますが、気になる取り組み事例を教えてください。

興味深い事例として、鳥取県の「パッケージ型仕事研究」という取り組みがあります(※)。これは複数社のオープン・カンパニーをセットにした仕事体験プログラムで、5日間程度の中で複数企業を回りながら仕事と地域の暮らしを体験するプログラムです。「これまで接点を持てなかった学生が、他社を訪問する機会に合わせて自社にも来てくれた」という企業の声など、一社だけでは難しい集客を地域連携で実現している点が特徴的です。

※複数企業、行政と連携したインターンシップ「パッケージ型仕事研究」 鳥取県内の就業×宿泊体験による、地域で働く魅力発信の取り組み|IRPリサーチセンター

浅く広く知ってもらう機会を工夫することで、特に地方の中小企業でも学生の興味・関心を広げられる可能性があります。一社で取り組むことが難しければ、地域で連携し、学生の興味・関心を起点に、徐々に自社への関心を高めていく方法も、まだまだ工夫次第でできそうです。

生成AIがもたらす就活と採用の地殻変動

 ――生成AIの影響はどこまで広がっていますか。

 2026年卒学生のうち、就職活動で生成AIを使用した割合は63.3%に達し、前年の34.5%から大幅に増加しました。使用場面は「自己分析」57.1%、「自己PRの作成」55.4%、「エントリーシートの添削」54.3%と多岐にわたります。生成AIから得た回答を「吟味して修正した上で使用した」学生は81.6%に上る一方、「そのまま使用した」と回答した学生も39.9%存在します。

図版2.png

※出典:インディードリクルートパートナーズ リサーチセンター
『就職白書2026』就職活動における生成AIの使用より
https://shushokumirai.recruit.co.jp/white_paper_article/20260220001/

事務手続きや作業的タスクの効率化には抵抗なく生成AIを活用する動きがある一方、学生の評価に生成AIを使うことには非常に慎重な企業が多いです。

選考プロセスにおける企業の生成AI活用事例として、面接官と学生がいる場で、生成AIが「この学生がこう言ったら、次にこういう質問をされてはどうですか」とサジェストする仕組みがあります。このような面接官をフォローするための活用など、生成AIを補助ツールとしての使いどころに可能性が広がっています 

一方で、学生・企業の双方で生成AIの活用が広がる中、エントリーシートだけで応募者を評価することは難しくなっています。生成AIの支援によってガクチカや志望動機などの文章が整いやすくなる一方、それだけではその人自身の経験や考え方を十分に捉えにくくなっています。

 もはや生成AIはパソコンと同じで、もう活用せざるを得ないツールです。だからこそ、今までのやり方ではない形で、自社で力を発揮できる学生かどうかを確認する手法を、企業ごとに再設計しなければならないタイミングに来ています。

企業が取るべき対応策――採用チームだけでは変えられない構造的課題

 ――これらのトレンドを踏まえて、企業はどのようなアクションを取るべきでしょうか。

これまでの日本企業の人事制度の多くは、長らく新卒一括採用や長期雇用を前提に、一律的なやり方で実施されてきました。それが会社や人事にとって最も効率的だったからです。しかし人口オーナス期に入り、これからは従業員一人ひとりがどのような働き方ややりがいを求めているかを理解し、複数の選択肢を用意して選べるようにする仕組みづくりが求められています。

 人的資本経営として経営戦略と人事戦略をつなげなければならないと言われるのは、まさにこの話の背景にあります。核になるのは人事であり、事業戦略を外部環境にフィットさせる上で鍵となる存在です。

インターンシップの設計にしても、生成AIへの対応にしても、採用活動だけを切り出して最適化しようとしてもどこかで目詰まりを起こします。職場の実態と採用時の説明にギャップがあれば、仕事体験は学生と企業の双方にとって有意義な機会になりません。採用活動の見直しと並行して、現在働く社員が力を発揮できる環境を整えることが重要です。また求める人材像が事業戦略と連動していなければ選考プロセスの再設計も方向を誤ります。人事全体、さらには経営と一体となって取り組むことが不可欠です。

人事担当者へのメッセージ――変化期こそ成長の機会

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――最後に、新卒採用に携わる人事担当者へメッセージをお願いします。

今まで当たり前だったシステム全体を見直さなければならない時期に来ています。大変な状況ではありますが、この変化期を乗り越えることが、人事としても、ビジネスパーソンとしてもさらなる成長を実現できる良い機会だと思います。一人でなんとかしようとせず、周りをうまく巻き込みながら乗り越えていただければと思います。

新卒採用の前提が根本から変わりつつある今、求められるのは目の前の施策の改善だけではありません。「何を評価し、どのように評価するのか」「自社で働く人がいきいきと働ける環境をどう整えるか」「経営戦略と人事戦略をどうつなげるか」。これらの問いに向き合うことが、結果として採用の成果にもつながっていくのではないでしょうか。 

本記事は、インディードリクルートパートナーズ リサーチセンター 栗田貴祥氏へのインタビューをもとに構成しました。データは『就職白書2026』(2026年2月20日発行)に基づいています。自社の採用戦略の見直しにぜひお役立てください。

インディードリクルートパートナーズ リサーチセンター
『就職白書2026』
https://shushokumirai.recruit.co.jp/white_paper_article/20260220001/

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