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新卒採用で失敗しない母集団形成のポイント
基本の考え方から具体的な設計方法まで解説
とりあえず例年通りにナビサイトに募集を出す、新卒紹介のエージェントにお任せする、そんな新卒採用をしていませんか?
新卒採用を成功させるには、最初に候補者と出会う工程である「母集団形成」が非常に重要です。母集団の数が足りていなかったり、自社にマッチしていなかったりすると、その後の選考や内定者フォローにどれだけ力を入れても、上手くいかない可能性があります。
この記事では、母集団形成の基本的な考え方から、効果的な設計の方法まで解説します。新卒採用に課題を抱えている企業の方は、ぜひ参考にして自社の母集団形成を見直してみてください。
INDEX
1.母集団形成とは?
母集団形成とは、簡単に言えば「採用を候補者集める活動」のことです。そう聞くと、当たり前のようにやっていることだと思う方もいるかもしれません。
一方で、企業が新卒採用で最も課題に感じているのが「母集団形成」だと言われています。実際の調査でも70%以上の企業が母集団形成に課題を感じると回答しています。
※2024年卒 採用活動の感触等に関する緊急企業調査|株式会社ディスコ
https://www.disc.co.jp/wp/wp-content/uploads/2023/05/k_kigyochosa_2024.pdf
なんとなく募集を出しておけば応募が集まる状況ではありません。ほとんど企業が、あの手この手で様々な施策を試して、なんとか苦労しながら候補者を確保しています。
2.母集団形成における課題
ここまで母集団形成に課題を抱える企業が多いのは、なぜなのでしょうか。具体的なノウハウをお伝えする前に、その前提として「母集団形成の何が難しいのか」を整理していきます。
母集団形成の目的は、自社に合った学生からの応募を集めることです。そのためには「数」と「質」の2つの観点での課題があります。
2-1.母集団の「数」を集める難しさ
母集団形成は、採用活動の最初のステップです。当たり前ですが、候補者の数は選考を経るごとに減っていくため、基本的には採用の目標人数よりも何倍も多くの母集団を集める必要があります。
たとえば仮に選考の通過率が、書類選考:25%、一次面接:50%、二次面接:50%、最終面接:75%、内定承諾:75%だとします。すると3~4人を採用したい場合でも、100名ほどの母集団が必要ということになります。もちろん応募が少なくても自社にマッチした学生がいれば採用枠が充足することもありますが、あまり現実的ではありません。
また少子高齢化による労働人口の減少などの背景もあり、新卒採用では売り手市場が続いています。特に知名度のない中小企業だと、そもそも母集団の数を集めること自体が難しくなってきているのです。今の新卒採用市場では、自社の魅力や他社との違いを明確にすることで、学生への認知を広げて、応募につなげる必要があります。
2-2.母集団の「質」を高める難しさ
母集団は数をたくさん集めればいいわけでもありません。候補者が多くなるほど、選考には負担がかかります。そうすると候補者1人あたりにかけられる時間が少なくなり、十分な見極めや動機付けができなくなります。だからこそ、自社の採用要件にマッチした質の高い母集団を形成することが重要です。
一方で、母集団の質を高めるのは、数を増やすのとは違った難しさがあります。極端な話をすると、予算をかけて様々な手法を使って露出を増やせば、そのぶん母集団の数を増やすことはできるでしょう。しかし母集団の質を高めようとするなら、自社の採用要件を明確にする必要があります。「どんな人材が自社で活躍・定着しやすいのか」「その人には何を伝えるのが効果的なのか」が見えていないと、自社にマッチした候補者を集めることはできません。
3.なぜ母集団形成が上手くいかないのか
母集団形成が上手くいかない状況には、いくつかの要因が考えられます。よくある失敗パターンを回避することが、自社の母集団形成を改善する第一歩です。
3-1.学生との接点が足りていない
母集団の数が少ない場合、そもそも学生の接点が不足しているかもしれません。母集団形成は、まず学生に自社を知ってもらうところが始まりです。特にBtoBやニッチな業界など社名が学生に認知されにくい企業は、情報の露出を増やして、学生との接点を作る必要があります。
また就活における学生の情報収集の手段は多様化が進んでいます。数年前のように大手ナビサイトに募集を出しておくだけで、学生が見てくれるとは限りません。もちろん予算などリソースの限界はありますが、母集団形成の手法を絞りすぎるのはリスクが高いです。
現在の新卒採用では、なるべく複数の手法を組み合わせて学生との接点を広く持つことが、より重要になってきています、
3-2.手法が目的やターゲットに合っていない
いろんな手法を試しているが上手くいかない、というケースもあるかと思います。その場合は選んでいる手法が目的やターゲットに適していない可能性が高いです。
母集団形成の手法には、広く数を集めるのに向いたものもあれば、特定の狭い層にアプローチするものもあります。学生の属性や志向によって、利用する媒体や参加するイベントも異なります。
いろんな手法を使えば、たしかに母集団の数は増えるかもしれません。しかし手当たり次第に試しても、自社に合った学生に出会える確率は低いです。母集団形成への投資をムダにしたくないのであれば、どんな学生に出会いたいのかを明確にして手法を選び、その手法が効果的だったのか振り返ることが大切です。
3-3.内容が学生に響いていない
母集団形成はターゲットとする学生に自社を知ってもらうことがゴールではなく、そこからエントリーしてもらわなければ選考につながりません。多くの企業がある中で、学生に選ばれる必要があるのです。
たとえば大手ナビサイトには、2万社を超える企業の募集が掲載されています。一方で、学生1人あたりのエントリー社数は23社程度です。つまり学生はエントリーの段階から、すでにある程度は企業を絞り込んでいるということになります。
自社に新卒で入社する魅力や他社との違いを明確にして伝えないと、たくさんある募集の中で埋もれてしまいます。人材紹介などを利用するうえでも、まずはエージェントに自社のことを理解してもらわないと、数ある企業の中から学生に紹介してもらうのは難しいでしょう。
4.「5W1H」で母集団形成を設計する
ここまでの内容を踏まえて、より効果的に母集団形成を設計するための考え方をお伝えします。
母集団形成は、非常に多くの手法から使うものを選んだり、その内容を考えてパートナー企業に伝えたり、やるべきことが多いです。無計画に進めることのリスクをわかっていながらも、何から考えればいいかわからないという企業の方もいるでしょう。
そのため母集団形成で検討すると良いことを、できるだけ覚えやすいよう「5WIH」の形で整理しました。必ずしも書かれている通りに進める必要はありませんが、ぜひ参考にして改善できるところはないか考えていただければ幸いです。
4-1.Why:なぜ新卒採用を行うのか
例年やっているからという理由で新卒採用を実施していると、進め方も例年通りになりがちです。しかし本来であれば、企業ごとに異なる新卒採用の目的が存在するはずであり、それが毎年同じとは限りません。
自社の文化を色濃く受け継いだ将来の幹部候補をイチから育てていきたいのか。未経験だからこその新しい視点を取り入れて組織を活性化したいのか。そのような新卒採用を行う理由によって、どんな学生をターゲットにするか、学生に何を伝えるべきかも変わってきます。
それが母集団形成を設計するうえでの軸となるため、新卒採用に関わる社員の間での認識を最初に揃えておきましょう。
4-2.Who:どんな学生をどれくらい採用するか
母集団形成を設計するうえで最も重要と言えるのが、この「Who」の項目です。手法や内容はすべて「どんな学生がターゲットか」を基準に検討します。
まずはどんな学生に入社してほしいのか、採用要件を整理しましょう。次にその要件を満たす学生がどんなことに興味を持っていて、何を就活の軸にしているかなど、詳細な人物像を考えていきます。
ここで注意したいのが、以下の3点です。
1. 理想像を描きすぎない
2. よくある抽象的な内容にしない
3. 採用担当の頭の中だけで考えない
1つ目は、理想像を描きすぎないことです。留学の経験があって、コミュニケーションが得意で、論理的思考力を持っていて...と理想の条件を増やしすぎると、現実に存在する学生から離れていきます。実際の学生は得意なこともあれば、その反面で苦手なこともあるはずです。だからこそ学生に求めるポイントはある程度絞り込まないと、現実的なターゲットを定められません。リアリティのある人物像を設計する上では、実際に入社した内定者や自社で活躍している社員に話を聞いたり、過去の適性検査などのデータなどを参考にするのが有効です。
2つ目は、よくある抽象的な内容にしないことです。たとえば「明るく元気な性格」をターゲットにしたとして、その学生に何を伝えたら響くか想像できるでしょうか。「接客業のアルバイトをしていて感謝の言葉にやりがいを感じている」など、できるだけ具体的な人物像を思い描いたほうが、手法やメッセージが検討しやすくなります。
3つ目は、採用担当の頭の中だけで考えないことです。どれだけ詳細な人物像を想像しても、それが実際の学生とズレていたら意味がありません。過去に新卒で入社した社員に話を聞いたり、面接や適性検査の記録など、できるだけ実際の情報をもとにして考えましょう。特に適性検査は自社に合った人材の特徴や傾向を客観的なデータで見られるため、人物像を言葉で定義するよりもブレがなく、採用担当者の中で認識を揃えるのに役立ちます。
どんな学生をターゲットにするか考えたら、何人を採用したいかも決めておきます。採用の目標人数によって、どれくらい母集団の数を確保しておくべきか変わってくるからです。
SPI-3は人材要件の設計に活用できます。
詳細はこちら>>「自社で活躍できる人材か見極めたい」
4-3.When:いつ学生に接触するか
新卒採用は大まかなスケジュールが決まっています。基本的には、卒業年度に入る直前の3月1日の広報解禁に合わせて、母集団形成の活動を始めるケースが多いです。
一方で、近年はインターンシップも重要な母集団形成の手段となっています。ターゲットとなる学生が、どのようなスケジュール感で学生生活と並行しながら就職活動を進めているかによって、いつ頃インターンシップを実施すべきかも検討します。
あえて母集団形成のタイミングを他社とズラすという方法もあります。夏季インターンや3月の広報解禁は学生の活動も活発ですが、そのぶん競合企業も多いです。ターゲットによっては、比較的ライバルが減る秋採用や通年採用との相性が良い場合もあります。
また直接的な採用活動が解禁される前から、SNSやオウンドメディアを使って自社を知ってもらえるように活動するのも、母集団形成のひとつの方法です。
4-4.Where:どこで学生に出会うか
ここまで整理してから、どの手法を使うか検討します。母集団形成には、非常に数多くの手法があります。そこから選ぶ基準として、一番に優先したいのが「ターゲットに接触できる可能性の高さ」です。ここでも新卒入社した社員や内定者から話を聞いて、どのように就職活動をしていたか調べて参考にします。
そのうえで、なるべくバリエーションを持たせられるよう複数の手法を組み合わせます。たとえば、不特定多数/特定の業界、オンライン/オフライン、短期集中/長期継続、など各手法の特長を考慮して、毛色が異なるものをいくつか選ぶと良いでしょう。
また社員や内定者が過去に就職活動していた頃から、学生の行動が変化していることもあるため、トレンドを押さえておくことも大事です。採用支援企業の各社が毎年発表している調査レポートなどに目を通して、就活生全体の傾向も把握しておきましょう。
手法によってかかるコストや手間も変わるため、最終的には予算や人的リソースも考慮して決定します。
4-5.What:何を学生に伝えるか
どの手法を使うか決まったら、それぞれの内容を考えていきます。ただ学生に伝える内容は、手法が違っても共通する部分が多いです。自社の魅力、他社との違い、学生の不安を解消するための情報などは、事前に整理しておいたほうがスムーズに進みます。
そうした内容を検討する際に重要なのは、企業として何を伝えたいのかよりも、ターゲットの学生は何を知りたいかを考えることです。たとえば「会社の歴史が長く安定成長を続けている」という特徴も、光の当て方を変えれば「業績が安定しているからこそ社員の挑戦を許容できる土壌がある」といったその企業で働く社員にとっての価値に変換できます。
他社との違いを検討するときも、事業上の競合企業を意識するのではなく、ターゲットとなる学生が他にどんな会社を見ているか?を考えます。もしかすると全く異なる業界の企業が、採用では競合になっているかもしれません。
これらを整理する際にも採用担当だけで考えずに、実際の社員や内定者の声を聞くといいでしょう。学生に伝えたい内容のベースが固まったら、それを各手法に合わせてチューニングしていきます。
4-6.How:どんな表現にするか
どんな文章やデザインにするかを検討するのは最後です。挑戦的なメッセージを出したい、カッコいい採用サイトを用意したいなどの手段から考えると、失敗につながりかねません。あくまでもターゲットの学生に対して、その手法や内容ではどういった表現が適切かを考えます。
また表現については自社だけでどうにかしようとせず、ある程度は専門家に任せたほうが良い領域でもあります。WhoとWhatを整理して、それをパートナー企業に伝えればHowが大きくズレたものになる可能性は低いはずです。
5.母集団形成は必ず「振り返り」もセット
ここまで効果的な母集団形成を設計するための考え方をお伝えしてきましたが、もうひとつだけ忘れてはならないことがあります。それは振り返りです。その年の新卒採用がひと段落したら、必ず結果とプロセスを振り返りましょう。
振り返りは「数」と「質」の2つの観点で見るのがオススメです。
「数」の観点としては、そもそも母集団が足りていたのか、各手法ごとにどれくらいエントリーを集められていたのかを確認します。母集団の数が足りていなかったのであれば手法や内容に問題があった可能性が高いです。そして各手法ごとに見比べることで、どの手法が効果的だったのかわかります。
「質」の観点では、主に選考通過率と内定承諾率を見ます。この2つの数字が良いほど、自社にマッチした質の高い母集団を形成できていたと考えられます。また適性検査の結果、面接の内容、実際の内定者や入社した社員の話からも、母集団の質がどうだったか確認できます。
こうした振り返りの結果を見て、翌年の新卒採用での母集団形成の手法や内容を見直していきましょう。
SPI-3は新卒採用の振り返りに活用できます。
詳細はこちら>>採用活動を振り返り、来期の改善につなげたい
6.まとめ
母集団形成は、採用活動の土台となる非常に重要なステップです。多くの企業が苦労していますが、母集団形成さえ上手くいけば、その後の選考や内定者フォローまで楽になります。
とにかく重要なのは、例年通りなんとなくで進めるのではなく、しっかりと目的やターゲットを設計して実行することです。ぜひこの記事で紹介した「5W1H」の設計を参考にしつつ、毎年の振り返りも忘れずに、母集団形成を改善していってみてください。