お役立ちコラム

多様性の時代における志向・仕事観の重要性・前編  ~SPI3 for employees開発の背景~

2023年08月11日
  • SPI3の特徴

20221月、弊社では従業員向け適性検査、SPIfor employeesのご提供を開始いたしました。
開発・ご提供背景について、SPIfor employeesの企画・開発者である福田隆郎に聴きました。

SPI3 for employeesの開発背景について教えてください。 

弊社は仕事柄、さまざまな企業・団体の人事部門の方々と接点がありますが、振り返ると2000年前後から、それまでと異なるご相談を多く受けるようになりました。
「若手がOJTの中で以前のように育たなくなっている(総合商社)」「採用時の面接でも高評価だった新入社員が、早期にメンタル不調で欠勤してしまった(マスコミ)」「できない自分を受け容れて変わることのできない若手社員が増えている(運輸)」などで、このころから従来のマネジメントや人材育成の方法が機能しにくいケースが増加していたのだと思われます。
もちろん個人差は大きく、若手層全員にあてはめて考えたり決めつけたりすることは危険ですが、全体として、自分が納得できるかできないかを重視する、無駄なことはせず最短距離で成長したいと考える、自分の市場価値を高めることを優先する、などの傾向が見られるようになっています。

これらの事象は、仕事や働くことに対する考え方の変化と言えますが、背景には社会環境や成育環境の変容があると思われます。
バブルの崩壊以降日本経済は低迷が続き、それに呼応して人事制度の面でも、成果主義の導入や終身雇用の放棄が進む一方、人生100年時代、年金制度の不安、老後の必要資金2,000万円などが取り沙汰され、働く個人は否応なく、自助努力で未来を切り拓かなければならないと考えざるを得なくなりました。
これに個性尊重教育やキャリア教育も影響して、「自分がやりたいこと」や「大切にしたいこと」に対する意識が高まり、前述したような傾向が一般化してきたのだと思われます。 

【考え方の変化】

  • 仕事の選り好みをせず、与えられた課題にはとにかく全力で取り組むことが当たり前
    →意義やゴールに納得でき自分の将来に役立つ仕事(だけ)をしたい
  • 何事も経験、気の進まないことにも積極的に取り組み、試行錯誤を通じて成長する
    →無駄なことに時間を使わず最短距離で成長したい
  • 会社で働く以上、組織への貢献を優先することが当然
    →自分の成長や市場価値を高めることを優先したい


そのような考え方の変化が、企業内でのどのような事象につながっているのでしょうか。

福田さん文中.jpg

このような従来と異なる考え方を持つ若手層が増加した一方で、受け入れ、マネジメントする立場の上司には、従来型の思考パターンを持つ人が多く、自分の成功体験を踏まえ良かれと思って指導してもなかなか納得を得られない、というケースが増えています。
アドバイスをするにしても、相手の考え方を理解した上で伝えないと、「押し付けられている」「ここではやりたいことができない」と受け取られて早期の離職につながってしまうこともあります。
「入った会社の風土に自分を合わせ、言われたとおりに頑張れば、将来はなんとかなる」という考え方が一般的だった時代には、資質の優れた人材を採用すればOJTを通じて育っていくという人事管理が可能でしたが、近年の環境下では、資質だけでなく個人の志向や仕事に対する考え方まで把握し、適切な入社後のマネジメントを行うことが必要になっていると言えるでしょう。
SPIfor employeesでは、こうした上司-部下間の仕事に対する認識のズレやコミュニケーション不全の軽減を目指して、ベースとなる仕事に対する考え方=仕事観と、仕事の中で重視すること、実現したいこと=志向を可視化することを目指しています。
 

今回測定している、志向・仕事観について具体的に教えてください。

まず「志向」ですが、働く上で重視することや実現したいと考えること、モチベーションの源泉であり、仕事や職場との合致度が適応に影響します。
成育する過程で形成されるが、仕事経験等を通じて変化する場合もあります。上司による仕事のアサインや意味付け・動機づけに活用いただける領域です。
「仕事観」は、仕事や組織、働くことに対する考え方、になります。組織や上司が求めるものとの合致度が適応に影響します。成育する過程で形成されるが、仕事経験等を通じて変化する場合もあります。
日常の言動の背景理解、上司-部下間の違いの把握、理解した上でのコミュニケーションで活用いただくことをお勧めしています。
上記「志向・仕事観」は、性格特性と一部相関がみられる指標もありますが、性格特性とは独立した別領域となっています。

志向のフレームワーク

志向.png


仕事観のフレームワーク

仕事観.png

 
志向・仕事観は、具体的にどのように活用できるのでしょうか。 

志向は、種々の欲求理論をベースにモチベーションへの影響が大きいものを列挙し、仕事観は、働くことに対して個人差や世代差が生まれやすい=認識のズレが起きやすい要素を対形式で表しています。
一人ひとりの志向を把握しておくことで、例えば上司は新しい課題にメンバーをアサインする際に、効果的な動機づけの方法を考えることができます。
例えば「貢献」重視のメンバーには、どのように人や社会に役立つテーマなのかを伝えるとモチベーションが高まる、「注目」の重視度が低いメンバーには、成果を上げれば目立って称賛されると伝えてもやる気にならない、など。
また、仕事観を理解しておくと、メンバーの言動の背景や自身との違いが分かり、スムーズな意思疎通が可能になります。
例えば「組織貢献」重視の上司が「自己成長」重視のメンバーに、会社にとって重要な課題だから頑張れ、と言うだけでは上司の考えを押し付けられていると受け取られてしまうが、本人の考え方を理解した上でそれにどのような価値があることかを伝えることで、前向きな取り組みを促せる、など。
若手層の特徴や世代間ギャップについては、Z世代などの表現と共に色々なところで取り上げられていますが、
迎合したり取り扱い説明的に対応したりするのではなく、相互理解に基づいた建設的なコミュニケーションを実現することが最も重要なのではないかと思います。SPIfor employeesは、このようなマネジメント支援のためにご活用いただくことを目的として開発されています。

志向・仕事観領域の測定・活用は、どのような効果につながるのでしょうか。

近年、日本でも「エンゲージメント」に対する関心が高まっています。人事領域においては、この概念は「個人と組織の成長の方向性が連動していて、互いに貢献し合える関係」と定義されますが、企業の関心は、高パフォーマンス人材や将来の中核候補人材のリテンションという文脈に向けられることが多いように思われます。
この中で、組織への愛着や今の会社や職場が好き、という感情は重要な要素ですが、企業で働く多くの人々が将来への不安と自己責任での対応圧力を感じている昨今の状況下では、「今の会社で成長して行ける、キャリアイメージが持てる」と考えられなければ人材の流出は止められないでしょう。
そのためには、会社側が複数のキャリアアップの道筋を示すことと、マネジャーがメンバー一人ひとりを理解してキャリアについて対話することが必要です。SPIfor employeesが可視化する志向・仕事観は、この理解と対話の土台となり得ると言えます。
エンゲージメントの向上のためには、処遇や労働時間など衛生要因となるものを充実させることに加えて、社員が「この会社の人たちと一緒に働いて行きたい」という気持ちと、「これからもこの会社で成長して行ける・キャリアビジョンが描ける」という思いを持てることが必要です。
SPIfor employeesが可視化する個人の特性や仕事に対する考え方は、これらの実現を支援する情報となります。

エンゲージメントとSPIfor employees
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「キャリア自律」の促進における、志向・仕事観の活用イメージがありましたら、教えてください。

不確実性が高まる社会環境の中で、「キャリア自律」の重要性が叫ばれています。
このことばは「個人がキャリアについて自分なりの考えを持ち、自身の力でキャリアを切り拓くこと」と定義されますが、そのためにはまず、一人ひとりが自身の仕事に対する考え方を整理して自己理解を深めることが重要です。
SPIfor employeesが提供する情報は、各人の性格的な特徴・持ち味や各人が重視するものや実現したいこと(=志向)と、仕事の位置付けや働き方に対する考え方(=仕事観)の明確化や再確認に役立ちます。志向・仕事観については、本人が回答した通りの結果になるため、全く意識していなかったことに対する気づきが得られることは多くないかもしれませんが、フレームワークに添って現在の考えを整理できるという利点があります。
一旦立ち止まって将来のキャリアを考える際に、ご活用いただきたいと思います。

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