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調査・研究レポート

2011年09月02日人と組織のフィットを科学する ~フィットの観点から採用、配置・配属を考える~

研究員 渡辺かおり

なぜ今、フィットなのか?

これまでの職業人生の中で、職場のメンバーと合わないと感じた場面や、担当している仕事が自分に向いていないかもしれないと感じた経験は、多かれ少なかれだれにでもあるのではないでしょうか。このようなことが重なると、やる気をなくしたり、場合によっては転職を考えたりするかもしれません。「うまく言語化できていないけれども、感覚的に感じる"合う・合わない"こと」を、ここでは「フィット」と呼びたいと思います。

フィットは、採用や配置・配属場面など人事において重要な観点となります。たとえば、採用選考場面においては「この応募者は自社に合うか」という観点で評価をするでしょう。一方、応募者側も、会社説明を聞きながら「この会社は自分に合いそうか」と確認しているでしょう。このように双方でフィットを確認しているのです。しかし、採用選考場面において企業側は前者の観点を重視しがちであり、後者の観点を十分には把握しきれていないように感じます。特にキャリア採用場面では、応募者が一度社会人経験をしていることから、指向や希望が明確であることが多いため、採用選考場面でそれを確認することが重要であるといえます。転職経験者を対象に弊社が2006年に行った調査によると、転職理由として「社風や企業風土が合わない」をあげる人が3割以上いました。また、企業側からは、キャリア採用における課題として「入社してもなかなか活躍できていない」「すぐに辞めてしまう」といった声があがっています。これらの背景のひとつには、指向のすり合わせが十分でなかったことが考えられるのではないでしょうか。

十分なすり合わせを行うには、フィットを感覚的にとらえるのではなく、科学的なアプローチでとらえることが重要になってきます。そこで今回、先行研究および弊社で行った実証研究をご紹介しながら、あらためて、「フィットとは何か」「会社側・応募者側双方の要件や希望が合致することがパフォーマンスを予測するのに有効かどうか」「実践場面で活かすにはどうすればよいのか」について考えてみたいと思います。

個人と仕事、個人と職場、個人と会社などが合う・合わないという現象は、「個人と環境のフィット」という大きな枠組でとらえることができ、「Person-Environment fit(PEfit)」と呼ばれています。1980年代以降、研究者や実務家の高い関心を集めているテーマであり、フィットとさまざまな結果変数(職務満足、組織コミットメント、パフォーマンス、転職意思など)との関係性に焦点をあてた多数の研究が行われています。環境にはさまざまな要素が含まれており、研究者によってフィットの定義や測定領域、測定手法が異なる状況にありましたが、最近になってようやく、フィットの概念の総合的な整理が行われてきています。

Edwards&Shipp (2007)ではフィットを構成するいくつかの要素のうち、代表的なものとして「要件適合度(Demands-Abilities fit)」と「指向充足度(Needs-Supplies fit)」の2つがあげられています。要件適合度とは、環境が要求するものを個人が有している程度と定義されます。採用場面でいえば、「会社が求めている要件を、応募者が満たしているか」ということを指します。たとえば、営業職で求められるスキルや要件を十分に満たす応募者がいた場合、「要件適合度が高い」といえます。一方、指向充足度とは、個人の欲求を環境が満たしている程度と定義されます。採用場面でいえば、「応募者が求めているものを、会社が提供できるか」ということを指します。たとえば、状況に応じて方針やあり方が頻繁に変わるような風土を好まない人にとって、変化に対しスピード感を持って対応していくような会社は「指向充足度が低い」といえます。

要件適合度、指向充足度とパフォーマンスとの関係

今回ご紹介する研究では、営業職に従事する企業人を対象に、要件適合度と指向充足度がパフォーマンスに及ぼす影響を確認しています。

PEfitに関する先行研究では、要件適合度と指向充足度をそれぞれ別々に研究対象とすることが多いですが(Kristof-Brown, Zimmerman, & Johnson, 2005)、本研究は、この両者をモデルに含めてフィットがパフォーマンスに与える影響を統合的にとらえようとするものです。指向充足度と職務満足度との関係性は高いことから(Kristof-Brown, et al., 2005)、要件適合度は直接パフォーマンスに、指向充足度は職務満足度を経由してパフォーマンスに影響を及ぼすという仮説モデルを立て、検証を行いました。

図表01 分析概要 図表01:分析概要

分析に使用した変数は、「要件適合度」「指向充足度」「満足度」「パフォーマンス」の4つです。それぞれ、以下のように測定しています。

1.要件適合度
経済産業省が行った人材ニーズ調査(2004)に基づいて、他の職種と比較して営業職に特徴的に求められる要件を抽出しました。続いて、抽出した要件に概念的に対応するものを『キャリア採用総合検査SPI 2 Career』の性格適性指標から5つ選び、合成した上で要件適合度の指標としました。5つの指標は、「人間関係を積極的に広げていく(関係構築)」「人との折衝を行う(折衝)」「柔軟に対応する(柔軟対応)」「自ら働きかける(積極性)」「変化の激しい状況の中で進める(変化適応)」です。なお、今回は性格面からの要件適合度に焦点をあてており、能力・スキルの指標は用いていません。
2.指向充足度
対象者の指向の把握には、『キャリア採用総合検査SPI 2 Career』の指向検査を用いました。『キャリア採用総合検査SPI 2 Career』の指向検査とは複数の仕事の特徴を表す項目の中から本人が強く抵抗を感じる仕事を3つまで選択し、それらの特徴が現在の仕事にどの程度あてはまるかを4件法で評定するというものです。その後、評定得点を反転し合計したものを「職務に対する指向充足度(Person-Job fit)」としました。職場風土の特徴についても同様に評定してもらい、「職場風土に対する指向充足度(Person-Organization fit)」の得点としました。これらの得点が高いほど、現職の職務や職場風土に合っている、フィットしているといえます。
3.満足度
「職務に対する満足度(2項目)」と「職場に対する満足度(2項目)」について対象者に評定してもらい、満足度の指標としました。
4.パフォーマンス
対象者の直属の上司に「対象者の職務遂行度の評価(1項目)」を求め、パフォーマンスの指標としました。

要件適合度と、指向充足度がパフォーマンスを予測するかどうかについて、分析を行った結果を図表02に示します。調査結果から、下記の4点が明らかになりました。

  • 要件適合度と指向充足度という2つのフィットを用いてパフォーマンスを予測するモデルは、一定水準の適合度(モデルのあてはまりの良さ)が示された(適合度指標 GFI=.947 AGFI=.889 RMSEA=.085)
  • 要件適合度がパフォーマンスに有意な影響を及ぼす(.26, p<.01)
  • 指向充足度は満足度に有意な影響を及ぼす(.80, p<.01)
  • 有意ではないものの、満足度もパフォーマンスに影響を及ぼす傾向がある(.12, p=.08)

図表02 分析結果:営業職における要件適合度・指向充足度とパフォーマンスの関係 図表02:分析結果「営業職における要件適合度・指向充足度とパフォーマンスの関係」

本研究の結果から、性格面での要件適合度がパフォーマンスに影響を及ぼすことが示されました。要件適合度とパフォーマンスとの相関係数は、スキルや能力要件を組み込んだ従来のモデルでは0.1ですが(Edwards et al.,2007)、本研究のモデルでは0.19と、より高い相関が見られました。採用場面で応募者を評価する際には、スキルや能力を中心に見ることが多く、キャリア採用では特にその傾向が強くなります。しかし、本研究の結果は、スキルや能力だけではなく、職務要件を満たすような性格的な要素もパフォーマンスを予測する上で重要な指標であることを示しているといえるでしょう。

また、指向充足度が満足度に強い影響を及ぼすことが確認されたことと、満足度からパフォーマンスへの一定の影響が見られたことは着目すべき点だといえます。たとえば採用場面では、一般的に、「応募者が採用要件を有しているか」という要件適合度を評価することがほとんどです。しかし、「応募者の求めているものが、この仕事・会社・職場で提供できるのか?」という指向充足度も併せて採用の観点に入れることが、入社後のパフォーマンスや満足度を予測する上で重要であるとこの結果から読み取れます。採用や配置・配属においては要件適合度と指向充足度の両方のフィットを確認することが大切だといえます。

採用、配置・配属におけるフィットのポイント

それでは、採用や配置・配属、マネジメント場面において、フィットという考え方をどのように活用すればよいのでしょうか。

採用場面

面接場面では、応募者が自社に合うかどうかを各面接者が感覚的に判断してしまうと、面接者によって評価が異なってきてしまいます。そこで、事前に評価の観点を決めておくこと、また観点をそろえておくこと、さらに面接場面で応募者と要件や指向について充分にすり合わせをしておくことが重要です。

配置・配属場面

配置・配属にあたっては、本人の適性や知識・スキルがどのような形で活かせるか、また、その仕事を進めていく上で弱かったり不足したりしている適性や知識・スキルは何か(要件適合度)を見極めた上で行うのが理想です。また、本人がどのような指向を有しており、その指向が仕事や職務の中で望むような形で活かせそうか(指向充足度)も考慮することができればさらに望ましいといえるでしょう。

ただし、現実場面では要件適合度は合致するが、職場には多少フィットしないというケースもありえます。また、本人の適性や知識・スキル、指向を正確に把握するのは難しいことです。そのような場合は、適性検査などの客観的な指標を参考にしながら、受け入れ先の上司に本人の特徴や指向を事前に共有し、配属時にすり合わせを行ってもらうとよいでしょう。また、日々のメンバーのマネジメントにおいても、本人の仕事に対する指向を把握することで、本人のモチベーションに配慮した仕事の割り当てをすることができるでしょう。

ポイントの整理

  1. 会社や職場の特徴と仕事の要件を明確化し、要件適合度・指向充足度の両側面から、面接で確認するポイントをイメージし、仮説を持って面接に臨むようにする。
  2. 面接で両方のフィットを評価しておく。
    • 要件に合致する人材か評価をする
    • 応募者の指向に関する情報を提供し、すり合わせを行う
  3. 受け入れ先の上司に、本人の特徴や指向を事前に共有しておき、マネジメントに役立ててもらう。

最後に

私たちが普段何気なく感じているフィットの感覚は、言語化し共有することによって、採用や配置・配属、日々のマネジメントに役立てることができます。個人が満足感を感じながら生き生きと仕事に取り組み、高い成果を最大限発揮してもらえるために、フィットの観点をぜひ活用していただきたいと思います。

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