導入事例

HRアナリティクスへの挑戦
~社員の成長は事業・会社の成長に直結する~

株式会社電通コーポレートワン
目的・課題

社員の成長が事業・会社の成長に直結するビジネスであり、社員の成長を加速させたいが、社員の状態が可視化できていなかった。

SPI3の
活用方法

約5,000人の社員一人ひとりの個性や違いに合った施策を実行するため、SPI3 for Employeesを導入。本人、ラインマネジメント、人財マネジメント担当者むけにそれぞれ読み取り方、活用方法のガイダンスを実施した。

効果

客観的なデータの提示によって、自身の無自覚なバイアスに気づくヒントになった、などの反応があり、職場内のコミュニケーション改善につながる手応えを感じている

人事は事業部門と連携する視点が重要

私たちは2人とも、電通に入社し、各々プランナーやビジネスプロデューサーとして、事業部門でキャリアを積んできました。事業部門の仕事も充実していたのですが、これからのキャリアを考えた時に、人事という専門性が高い領域にチャレンジしてみることに興味を持ち、希望して異動してきました。

実際に人事の仕事に携わってみると、専門知識について学ぶことは多いものの、社員を顧客と捉え、共通の目的に向けて企画するプロセスは事業部門の仕事と似ている部分もあると感じています。また、事業部門での経験があるからこそ、事業部門と連携する視点を持つことを大事にしています。

電通のビジネスは定型の製品やサービスを売ることではないため、すべての仕事において「人」が起点となり、「社員の成長が事業・会社の成長に直結する」と考えています。そのため、「社員のためにやった方がいいと思ったことは、会社の発展に繋がる」と信じて、妥協せずに事業部門とコミュニケーションを取りながら遂行することを大切にしています。

5000人の社員の成長を可視化・加速させたい

電通では2020年より「人財の見える化プロジェクト」に取り組んでいます。
現在は、コーポレート機能を専門的に担う(株)電通コーポレートワンにて推進しています。プロジェクトの根底にあるのは、「人財(=社員)の成長への着目」です。DXをはじめとした世の中の環境変化やビジネスモデルの変換が進む昨今では「人財の成長」の必要性が増しています。

ただし5000人も社員がいると、人の成長はさまざまで、全員に対して一度に施策を打つことは困難です。まずは施策の対象の優先順位を検討するためにも、今いる人財の状態を可視化する必要があると考えました。
そこで、社内に点在していたHR関連のデータを集め、整理していきました。具体的には、パーソナリティ(人物特徴)データや、異動などのキャリア履歴データなどです。

それらの膨大なデータを整理するプロセスを経て、社員の状態を見る指標として「パフォーマンス(評価)」と「自己成長意欲」の2軸を設定し、それぞれを3層に分け、9つのセグメントに分類を行いました。

※縦軸:パフォーマンス(評価)の軸は、社員ごとの期待される役割(ミッション)の重さ(グレード)を、3段階で分類(高・中・低で表現)。ミッションおよびグレードは、毎年期初に社員一人ひとりに付与される。
※横軸:自己成長意欲の軸は、経験学習理論における「経験学習サイクル」を基に独自に設定した「自律的成長サイクル」の到達度合いに応じて「模索層」「自律層」「拡大層」の3段階に分類している。3月と8月の年2回、「自律的成長サイクル」に関する設問に社員が回答。その結果を集計し、分類している。


2021年3月時点の状態で驚いたのが、自己成長意欲が低いとされる「模索層」のボックスに45.8%の社員がいたことです。まずは、自己成長意欲を高めてもらう施策を行うべきと判断し、さまざまな施策を行いました。

例えば「未来構想キャンプ」という、業務と少し離れて自分を内省するプログラムなどです。
その他「人財育成会議(ポテンシャルファインダー)」を事業部門と共に実施しています 。事業部門においても、ラインマネジメントが部下の成長支援を積極的に行うようになるなど、「成長」に対する機運が高まっていると手応えを感じています。

そのような一連の施策を通じて、1年半後には「模索層」は5%減少しました。
いまは、常に「模索層」に停留している人に着目し、とどまり続ける人を生まないための取り組みも思案中です。

「自らの特性×組織の特性×会社の特性」を捉えるガイダンスを開催

「人の成長は個々人によって異なる」という前提を置いた際に、一人ひとりの個性・違いを把握し、それぞれに合った施策を企画・実行できるツールを導入したいと考えました。そこで、個々人の志向・仕事観を可視化できるツールとして、SPI3 for Employeesを全従業員に実施することを決定しました 。

人事としては、SPIの豊富な提供実績も魅力でしたが、従業員からは「知名度が高いSPIだから受けてみたい」という声もありました。元々自己分析・自己診断を好む社員が多いことに加え、就職活動で一度は耳にしたことがあるSPIに興味を持ったようです。知名度の高さが従業員の受検を後押しするという、効果があることは私たちにとっても意外でした。

結果のフィードバック(開示)をすると伝達したうえで受検案内を行うと、9割以上の社員が受検をしてくれました。受検が終わると、当社で導入しているタレントマネジメントシステムにすぐにデータを格納し、各自が自分の結果を閲覧できるというスピード感が高い仕組みも構築しました。

SPI3 for Employees報告書の一部

ただ、結果の一方的な開示だけでは、組織的な成長に物足りないと思い、SPIのフィードバックガイダンスも開催することにしたのです。ガイダンスは「本人向け」「ラインマネジメント(10名程度規模の組織長)向け」「HRMD(100名程度規模の組織における人財マネジメント担当者)向け」の3種類を実施しています。

ガイダンス全体の工夫としては、自己理解を促し、他者とのコミュニケーションに活用してもらうように心がけました。単に得点が高い低いではなく、「自己成長⇔組織成長」「自分らしさ⇔自己変革」などのどちらの特徴がより強いかを説明し、対比において自分の特徴を理解してもらいました。会社の傾向と比較した自身の特徴が明確になり参考になる、合わないと思い込んでいた人の捉え方が変わった、など自己理解や他者理解のヒントになった、という感想がありました。

またラインマネジメント向けのガイダンスでは、自分が担当する組織やメンバーの特徴を理解するような工夫を行いました。ラインマネジメントは日頃のコミュニケーションの実感があるため、メンバーと自分との違いを改めて知ることで、自分の伝え方ではみんなに響かなかった理由が分かった、自身の無自覚なバイアスに気づくヒントになった、など、前向きな感想も出てきました。いままでは客観的なデータがなかったので「なぜ伝わらないのだろう?」で止まってしまっていたやり取りも、どんな違いがあったのかが分かればお互いがWin-Winになるコミュニケーションにつながる手応えを感じています。

一つひとつのデータも、集合体として捉えると活用方法が広がる

人事としては、SPIを個人のデータとして本人、上司に開示するだけでなく、さらに集合体のデータとして分析することで、さまざまな活用ができると思っています。

社員のSPIデータから得られる示唆は、採用や配属にも活用できる手応えを感じています。現在の活躍人財の傾向などを分析することで、適した人財を適した部署に配属するための一助にできる可能性が高まると考えます。

例えば「経験×資質・志向仕事観」「スキル×資質・志向仕事観」などを掛け合わせて分析すると、新たな発見があるのではないかと思っています。資質・志向仕事観と経験やスキルの関係性が分かれば、社員一人ひとりに対して、それぞれがより成長しやすい仕事や環境を明らかにすることができるかもしれません。

また、「組織ごとの人財タイプの割合」など、社員の特性や傾向を数値化することもできます。
所属組織で伸び伸びと仕事をしにくい場合 、資質や価値観がその組織にフィットしていないケースもあるかもしれません。そのような傾向を把握できれば、その人に適した機会の提供や支援を行う施策も考え得ると思います。多様な人が働きやすい・活躍できる状態を創ることは、さらに新しい価値を生み出していくことにもつながっていくと思います。

電通らしいHRアナリティクスへと発展させたい

「社員の成長=事業・会社の成長」に向けて、もっと人事としてできることはあると思っています。

個人の成長プロセスに着目し、人財の成長ルート解明にも挑戦したいですね。
人の資質によって、必要となる経験、ある種の「ゴールデンルート」は違うでしょう。
どんな資質を持った人が、どんな経験を積めばより成長が速くなるか、そのルートが分かれば、さらに本人の成長や組織の活性化に導けるかもしれません。

最終的には、個人の資質と事業数字の結びつきも分析したいと思っています。
もちろん、資質と事業数字の間には、数え切れないほどの変数が存在するでしょう。
そのメカニズムや道筋を見いだすことができれば、10年後など中長期に向けた人の成長や採用に活用できる可能性があります。

人の成長にこだわるのは、それが事業・会社の成長につながるという信念があるからです。
今後も電通らしいHRアナリティクスへと発展させるべく、飽くなき探求を続けていきたいと考えています。

人事センター HRマネジメント室 キャリアデザイン戦略部 松澤 美穂様  小林 洋子様

株式会社電通コーポレートワン

従業員数:
約1,500名(2022年1月時点)
業種:
その他 
課題:
  • マネジメント
  • 組織開発

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