導入事例

上司と新入社員の間の
コミュニケーションギャップを縮める
~アセスメントツールを介して
双方が歩み寄る新入社員の育成支援策とは~

花王グループカスタマーマーケティング株式会社
目的・課題

対面コミュニケーションの機会が減少する中でも、上司・若手社員が信頼関係を築き、踏み込んだコミュニケーションを取れる状態を作りたい。

SPI3の
活用方法

新入社員のSPI3 for Employees結果をもとに、新入社員が自己開示シートを作成し、上司に共有。上司はその内容を踏まえて育成プランシートを作成し、育成に取り組んだ。

効果

新入社員は100%が「結果を今後に生かせる」と回答。上司からも好評であり、上司・新入社員の深い相互理解が進む機会となった。

社外にも通用し、社会に影響を与えられる人財を育成したい

当社は、花王グループのなかの「販売」を担当する会社であり、小売業を通じて生活者へ花王商品とその価値を届ける役割を担っています。私たち3人も、人事を担当する以前はそれぞれ小売業への営業や販売企画に従事していました。

当社では、社内での研修だけでなく社外の人を交えた「越境学習」を取り入れるなど、ここ4年ほどの間にさまざまな人財育成に関わる取り組みを実施してきました。これは、昨今のビジネス環境の変化を踏まえ、これからは花王グループのなかだけでなく「社外にも通用し、社会に影響を与えられるような人財育成が重要」だという考えに基づいています。

また、OKR(Objective and Key Results) の導入も行いました。MBO(目標管理)で定められた項目をただ遂行しているだけでは、現在のビジネス競争は勝ち抜けません。社員一人ひとりが、目の前の目標を超えさらなる成長を目指してチャレンジし続けていくことが重要であること考えました。このOKRの考え方が現場に浸透し、社員一人ひとりのチャレンジを支えられるよう、OKRの導入と併せて月1回、上司とメンバーとの間で1on1ミーティングも実施しています。

若手と上司の双方から聞こえてきた不安や一歩踏み込めないもどかしさ

入社したばかりの新入社員は、新しい出会いや自身の成長に期待を抱きながらも、組織に馴染めるのか、仕事で成果を生み出せるのかなど、大きな不安を抱えています。一方で、最近は若い社員を迎え入れる上司の側からも、マネジメントに悩むという声が上がってくるようになりました。

当社はもともと風通しが良く、上司・メンバー間の距離も比較的近い風土があるため、かつては気軽に顔を合わせて話をしたり、若手社員が上司や先輩の背中を見て学んだりすることができました。しかし、時代と共にキャリアや仕事に関して多様な価値観が生まれ、在宅勤務やフレックス制度の導入など働き方が柔軟になる一方で対面の機会が減っている。若手社員も上司ももっとコミュニケーションを取り、信頼関係を深めたいという思いはあるものの、お互いに一歩踏み込めないもどかしさを抱えていたのです。

SPI3 for Employees 導入の決め手は「本人用」と「上司用」の2種類の報告書

上司と若手社員のギャップを縮めていくうえでは、「今の若い世代に課題がある」とか「上司が歩み寄るべき」というような、どちらか一方が他方に合わせることは本質的ではないと考えています。互いに一歩ずつ歩み寄れるような関係性を理想と置き、そのためのきっかけづくりについて、新卒採用や育成を別々で担当していた私たち3名が集まり、まずは新入社員とその上司を対象とする取り組みの検討を始めました。

最初に挙がった方法は、互いを知るための「自己紹介」でしたが、それだけだと主観的な情報に終始してしまう懸念が生じました。そこで、あらためて自らの性格や価値観を客観的に可視化できるツールが欲しいと考え、アセスメントツールを中心に検討した結果、SPI3 for Employeesに辿り着きました。

導入の決め手となったのは「本人向け」と「上司向け」双方の報告書が存在する点と、それらの内容が充実していた点です。私たち人事も主に集合研修などの場面で直接新入社員の人財育成に関わることはありますが、それ以外の大部分は現場が中心となります。上司向けの報告書には、上司が新入社員とコミュニケーションを取るうえでの具体的なヒントが記載されているため、上司にとって日々の業務や1on1ミーティングに生かせそうだと感じました。また、その様子を人事としてもヒアリングし、配属後の状況も追っていけると感じた点も決め手になりました。

2023年4月に人事内で議論し、同年7月には2023年卒の新入社員に、8月にはその上司にそれぞれSPI3 for Employeesの受検を実施しました。短期間での企画・実施になりましたが、新入社員を対象とする取り組みなので、すぐに実施しないと次のタイミングは1年後になってしまいます。取り組みの必要性を役員に訴えかけ、スピード重視で承認を取りつけました。

この取り組みは、我々人事としても新しいチャレンジになりました。今の延長線上ではなく、理想の状態を自ら描き、チャレンジしたいと声を上げることで周囲の協力を得られ、これまでにない新入社員向け施策を進める。普段、社員に自律や挑戦を呼びかける側の私たちとしても、まさに声を上げることの大切さや、枠を超えて挑戦することの価値の大きさをあらためて体感する良い機会となりました。

新入社員と上司の歩み寄りを支えるプロジェクトを展開

SPI3 for Employeesという強力なツールは準備できたのですが、さらに効果を上げるために、2つのオリジナルツールを作成しました。

1つ目は、新入社員向けの「自己開示シート」です。私たち人事としては、もともと新入社員には客観的に自らを振り返りつつ、言語化し、受け身にならず、積極的にコミュニケーションを取ってほしいと思っていました。そこで、新入社員がSPI3 for Employeesの結果を参考にして、自らの強みや弱みといった特徴やこれから働いていくうえでの希望や不安を自ら記入し、上司に開示するためのシートを用意しました。

2つ目は、上司向けの「育成プランシート」の作成です。こちらは、新入社員の配属前の時期に人事からの申し送りやSPI3 for Employeesの結果を参考に、配属後の育成計画を記入するものです。シート記入の際には上司自身と配属予定の新入社員のSPI3 for Employeesの結果を見比べながら、コミュニケーションの取り方や目標の置き方の参考にしてもらっています。このシートを毎月の1on1でブラッシュアップし、履歴を残すことで、人事でも適宜状況を確認できるようになっています。

社内において、上司と新入社員が互いに歩み寄ることで心理的なギャップを縮めていく、この取り組みをより強力に推進していくために、私たちはこれら一連のツールや取り組みを「トリセツ」と称して展開しました。あえて銘を打ったことで、新入社員の成長を見守り、賞賛する取り組みとして社内に理解と協力の輪を広げることができています。

社員の自己理解・他者理解の促進と新入社員の育成計画策定に役立った

新入社員本人に向けては、SPI3 for Employeesの受検後に、新入社員同士でお互いの結果を共有しディスカッションする場を設けています。そこで受検結果についてフィードバックすると、各々から「自分が知らなかった特徴を知ることができた」「仕事に向かうための自己分析ができた」と、新たな発見についての声が多く上がってきています。また、互いの結果を開示することで、新入社員同士の相互理解も進みました。事後に採ったアンケートでは「この結果は今後に活かせる」という回答が100%と、非常に好評でした。

また、自身の受検結果と配属予定の新入社員の受検結果を見た上司からは「自分の特徴との違いが客観的に理解できた」「自分とモチベーションのポイントが違うから、注意すべき点が事前に把握できて良かった」など、前向きなコメントが多く寄せられました。例えば、受検結果の報告書内における「仕事の進め方」という欄に記載されている内容が、仕事をアサインする際や進め方のすり合わせを行う際に役立っているようです。

今回のSPI3 for Employeesの活用も含めた一連の取り組みでは、上司と新入社員が互いをより深く理解し合える機会を提供でき、また人事として新入社員の成長を見守り、支援する体制づくりができたと感じています。

社員同士の相互理解の枠を広げ、組織全体で新人を支援していく

上司とメンバーの間のギャップを「よくある世代間ギャップ」で片づけてしまっては何も前に進みません。また、どちらが正しい・正しくない、良い・悪いという話でもないと思っています。異なる時代を生きてきて、異なるバックグラウンドを持った人同士が協働していくうえでは、歩み寄る姿勢が重要です。

まずは自身と相手について理解し合うこと。そのきっかけとして、互いの特徴を言語化できるアセスメントツールは有用であり、私たちの今回の取り組みではSPI3 for Employeesがその役割を果たしてくれました。

まだよく知らない人同士が協働していくうえでの最初のコミュニケーションのきっかけとして、また日々の業務において「この人はなぜこう感じた・考えたのだろう」と思った際に、その背景を理解するための補助として使ってもらうことで、まさに私たちの掲げる「互いに一歩ずつ歩み寄る」関係性の構築につながると感じています。今後は、この一連の取り組みを継続し、広げていくことで、組織全体で成長を促進し合えるように進化させていきたいと考えています。

人財開発部門 田野 真由実様 佐賀 幸二郎様    弓削 正之様  

花王グループカスタマーマーケティング株式会社

従業員数:
6,783名(2024年1月時点)
業種:
流通・小売 
課題:
  • オンボーディング
  • マネジメント

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