調査・研究レポート
SPI 2データを通して見える新卒採用の動向
研究員 藤田彩子
目まぐるしく変化する新卒採用の現場。2007年問題、景気回復、少子化と大学全入時代の到来、経団連の倫理憲章・・・・・・と新卒採用を取り巻く環境を語るキーワードはたくさんありますが、ここでは、多くの企業にご利用いただいている、適性検査SPI 2のデータから近年の採用の動向に焦点を当ててみたいと思います。
能力検査の受検者数はここ数年増加傾向
新卒採用シーズン中(1月~6月)の能力検査の受検者数はここ3年間、毎年増加傾向にあります。図表1は2004年~2006年6月のU(大学)レベルの能力検査を受検した大学卒業見込みの学生の数を表したものです。回復基調にある景況や2007年問題を反映して、企業の採用が活発になっている傾向を、多くのメディアが伝えており、リクルートワークス研究所の調査からも、ここ数年企業の求人総数の増加が顕著であることがわかります(図表2)。図表1のデータも同様の傾向を示しているといえます。
図表1 実施形態別に見た能力検査の受検のべ人数
大学卒業見込みの学生のU(大学)レベルのテスト受検を
P&P、テストセンター、WEBテスティングの実施形態別で見たもの 
| 2002年度(2003年3月卒) | 2003年度(2004年3月卒) | 2004年度(2005年3月卒) | 2005年度(2006年3月卒) | 2006年度(2007年3月卒) | |
|---|---|---|---|---|---|
| 求人倍率 | 1.30 | 1.35 | 1.37 | 1.60 | 1.89 |
| 求人総数 (千人) |
560.1 | 583.6 | 596.9 | 698.8 | 825.0 |
| 民間就職 希望者数 (千人) |
430.8 | 433.7 | 435.1 | 436.3 | 436.9 |
※(求人倍率)=(求人総数)÷(民間就職希望者数)
P&P(マークシート方式)、テストセンター、WEBテスティングといった実施形態ごとに見ると、特に昨年から今年にかけて、P&Pが減少傾向にある一方で、テストセンターでの受検者数が著しく増加しています。テストセンターは、弊社で会場を用意し、顧客企業から受検案内を受け取った受検者が都合の良い時間を予約して適性検査をコンピューター上で受検するシステムです。顧客企業にとっては適性検査の実施の手間を省き、面接選考などに多くの人員・時間を割けるようになるというメリットがあります。また、受検者の本人認証や適切な受検環境が確保された上で検査が実施されるので、公平性という点からも優れた仕組みです。加えて、テスト理論を高度に応用した弊社独自のシステムにより、結果の安定性・標準性はP&Pと同様の高い水準を保っております。こうした品質・利便性の高さが多くの企業に認められ、テストセンターの受検者の大幅な増加につながっているものと思われます。
WEBテスティングについても、2004年から2005年にかけて約70%増加しており、昨年・今年は全体の15%以上を占めています。WEBで実施するテストは、本人認証が難しい、テストの受検環境を実施する側(多くは企業)が管理できないといった問題点がある一方で、パソコンとインターネット接続環境があれば、日本全国、ひいては海外からも受検ができるという大きなメリットもあります。受検の機会を広く提供したい、という企業に受け入れられ、定着しつつある実施形態といえます。
従来のP&Pに加え、テストセンター、WEBテスティングと適性検査の実施方法の選択肢が広がり、企業の採用戦略に合わせて最も適した手法を選べる時代になったといえるでしょう。
受検のピークは3月から4月
図表3は、実施形態別の時期別受検状況を、2004年~2006年の3年間についてまとめたものです。P&Pテストの実施のピークが4月上旬である一方、テストセンターやWEBテスティングの実施のピークは3月下旬となっています。1月~3月の受検者数が1月~6月までの受検者数に占める割合をみると、2005年、2006年でテストセンターが約6割、WEBテスティングが約7割となっている一方、P&Pテストでは約3割にとどまっています。また、全体的に1月~3月の受検者の割合はこの3年間で大きくなる傾向にあり、テストの実施が早期化していることがうかがえます。
図表3 大学卒業見込み者のP&P、テストセンター、WEBテスティングの時期別受検状況 


どの実施形態についても、ピークを過ぎると受検者は急激に減少します。採用選考がかなりの短期間に集中していることがデータからもわかります。
過去5年間における基礎能力検査の標準得点の平均はほとんど変わらず
最後に、基礎能力検査の平均点の推移から見た近年の受検者の能力的な特性について、簡単に言及します。
基礎能力検査の得点は、20点~80点の標準得点で表されます。基準集団(Uタイプでは大学生)の平均が50点、標準偏差が10点となるように調整されており、ほぼ「偏差値」と同じ感覚で捉えられる指標です。
Uタイプのテストについては、毎年基準集団から約4万件をサンプリングして得点の変動やテストの品質を確認しております。図表4は、2000年以降のUタイプ能力検査の平均点の推移を見たものです。言語検査・非言語検査それぞれについて、2000年の水準を0として経年比較をしています。
図表4 2000年度~2005年度における標準得点の平均点の推移

弊社は、基準とする集団(ここでは大学卒業見込みの学生)の緩やかな変動を見ながら、得点の出方を調整してテストの品質を保っておりますが、この図では調整による変動を取り除いています。したがって基準とする集団の変化がそのまま現れていると考えられます。この図を見ると、言語検査・非言語検査とも5年の間の変動はほとんどなく、標準得点にして1点以内に収まっています。弊社の適性検査を受検した学生のみのデータであることを考えると、性急な一般化はできません。しかし、過去の学習指導要領の変更や大学全入時代の到来といった事情から、大学生の学力低下が危惧されている昨今ではありますが、基礎能力(一般知的能力)という枠組のなかで見る限りでは、大学生の能力はここ5年間で大きく変わっていないといえます。理由としては、基礎能力が、学力よりもっとベーシックな能力を測定しようとしていること、そしてその能力は数年間で急激に変化するものではないことがあげられるでしょう。










